日本初の女性弁護士の一人である三淵嘉子をモデルにした連続テレビ小説『虎に翼』(NHK総合ほか)。法律を学べる唯一の学校に入学した戦前の女子部時代、そして弁護士、戦後は裁判官として働く主人公の寅子が、世の中の「はて?」と対峙する姿を描きます。最終回を前に、脚本家の吉田恵里香さんのインタビューを『週刊文春WOMAN2024秋号』より抜粋して紹介します。
――4月から始まった『虎に翼』も、いよいよ最終回を迎えます。今、どんなお気持ちですか?
吉田 「悔いなくやりきった」と感じています。もちろん反省する部分はあるのですが、今の自分の力を出しきれたと思います。初めての朝ドラを出演者、スタッフ、すべてが恵まれた現場で書けたのはとても嬉しいことでした。
――主演の伊藤沙莉さんはじめ、出演者の方々も魅力的でしたね。
吉田 伊藤さんが寅子を演じてくれたので、ここまで書けました。他の方だったら、寅子のような疑問や対話を諦めない生き方ではなく、もう少し分かりやすいキャラクターにしたと思います。
伊藤さんは怒りを表現しても嫌われない、稀有な才能を持った俳優さんです。当時の女性の中では寅子は恵まれた環境で育っていますが、伊藤さんが等身大で演じていると、それが嫌味なく素敵だなと思えるんですよね。
――視聴者の反応には触れていたのでしょうか。『推しの子』の作画・横槍メンゴさんとのラジオ(『ウチらと世界とエンタメと』)では、食事中の15分だけSNSを見ると明かしました。
吉田 シナリオを書き終わったので、少しずつまとめて読んでいるところです。4歳の息子がいるのですが、息子が黙々と動画を見ながらご飯を食べてくれるときだけSNSの反応を見る、と決めていたんです。でも最近は私の膝の上でご飯を食べるのがブームで、身動きが取れず(笑)。
視聴者の反応を知りすぎたり、全く目を通さないのではなく、バランスが大事だと思っています。とくに朝ドラは長期戦なので、締め切りが来ているのに落ちこんでいたら作品のためになりませんから。自分のメンタルを保つために、執筆中はなるべくSNSを見ないようにしていました。
ドラマ『チェリまほ』(『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』)は、出産前に書きあげて、出産後にオンエアだったので、放送中に感想を見ていましたがそれは例外で。『虎に翼』についてはありがたいことに、放送の初めの頃に、評判が良いとスタッフから教えていただいたので、視聴者の方を信じて書こうと決意を新たにできました。