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Xで脚本の意図を投稿した理由

――大切なテーマを扱った回の後に、Xで意図を投稿されることもありました。轟(戸塚純貴)のセクシュアリティをめぐって、よね(土居志央梨)と話す51回の後の投稿は印象的でした。「私は、透明化されている人たちを描き続けたい」「こういうことを作家が書くことが嫌な人もいるだろうけど、言わなきゃいけないことは言わなきゃいけないんです。ごめんね!」という言葉に、ドラマの方向性を確信した視聴者も多かったと思います

吉田 社会の様々な問題にどう対処するのか、正解はないと思っています。けれど『虎に翼』では人権やLGBTQなどの問題を扱っているので、言わなくてはいけないことがあると思っていました。作品解釈は自由ですが、作品を巡ってSNSで差別的な発言があったときに黙っていると、その行為を肯定することになってしまいますから。

よね(土居志央梨)と轟(戸塚純貴) ©NHK

――『虎に翼』は主人公の個人としての成長と「法とは何か」という課題がシンクロしながら進みます。絶妙なシナリオをどのように作っていったのでしょう。

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吉田 自分で調べた内容とスタッフからの資料を合わせて、まずプロットか初稿にする。それを考証の先生方に見ていただく流れで進めました。エンターテインメント作品をつくるときには、「事実をどこまで崩すか」という問題が出てきます。今回は朝ドラですし、なるべく事実に沿いたい気持ちが強かったので、史実を確認しながら書けたのは考証の先生方のおかげです。私が調べてきたものに対して、「でもこれは昭和◯年からの制度だからドラマに合わない」と指摘してくださったりと、良い経験でした。

――小誌の特集は「パートナー」ですが、今作でも様々な形でのパートナーシップや、血縁関係に依らない「家族のようなもの」が描かれています。

吉田 異性同士の関係性が「恋愛ありき」にならないように気をつけていました。轟とよねは2人で弁護士事務所を始めますが、男女のカップルになる展開も考えられたでしょう。けれど、轟は自認していなくても同性が恋愛対象の人間と当初から決めていたので、恋愛関係にはなりません。ただパートナーではあることは間違いないし、家族のようなものだと描きたかったんです。

吉田恵里香さん

 LGBTQの問題については、寅子自身が当事者であれば、より問題を際立たせることができたかもしれません。しかし、三淵嘉子さんというモデルの方もいらっしゃいますし、寅子の目線は、マジョリティといいますか、世の人の言う「普通」のライフステージを歩ませた方がよいと思いました。社会のなかで女性が置かれる立場については、女子部の同級生だったよねや、華族の涼子様(桜井ユキ)、離婚と親権に悩む梅子さん(平岩紙)に託したところもあります。