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 経済活動の裏方であった物流業界が、われわれの日常と切っても切れなくなるサービスへと変貌する転機となる3つの出来事を振り返っておこう。

(1)最初は1957年。

 佐川急便の創業者である佐川清が、飛脚として大阪にある問屋からカメラ10台を京都のカメラ屋に届けたとき。これが宅配便が生まれた瞬間だ。このときは、企業間の配送だった。ビジネス用語ではBtoB(Business to Business)と呼ぶ。

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(2)次は1976年。

 企業間だった宅配便を家庭からミカンやお米などを送る主婦層をターゲットに絞って改良したのが、ヤマト運輸の小倉昌男で、〈宅急便〉としてサービスを開始する。これはCtoC(Customer to Customer)と呼ばれる。ちなみに、宅急便はヤマト運輸のサービス名であり、宅配便はその一般名詞だ。

クロネコヤマトの配達員 ©時事通信社

(3)最後は2000年。

 アマゾンジャパンのサービス開始。日本では再販制度があり書籍の値引きができなかったため、代わりに配送料を無料とした。通販企業から消費者に配送されるのはBtoC(Business to Customer)と呼ばれる。

アマゾンジャパンの上陸に伴う「送料無料サービス」の“影響力”

アマゾンの小田原流通センターは、東京ドーム4個分という広大な面積をもつ ©時事通信社

 3つのうちで、最も大切なのはアマゾンジャパンの上陸に伴う送料無料サービスの開始。これを契機にネット通販と宅配便が一気に人々の生活に浸透していく。と同時に、送料無料が運賃のダンピングを引き起こし、宅配業者と、そのドライバーが大きく疲弊することにつながる。

 宅配便の取扱個数は現在、年間50億個を超え、アマゾン発の荷物は10億個前後とみられる。今や生活とは切っても切り離せないぐらい密接な存在となった。

 だが、同時に、さまざまな報道によって、物流センターでの労働環境や、宅配業者の待遇などが数々の問題をはらんでいることが周知の事実となってきた。そうしてできたコンセンサスの上に、この映画は成り立っている。

 取材のため「2度、アマゾンの物流センターで働いたことがある」という筆者が現場で見たものとは。後編でくわしく紹介する。