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救急車を呼ぶまで1時間、女性は搬送された病院で…

 最初は、アルバイト仲間が倒れた女性を見つけたが、アルバイトが携帯電話を持って入ることを固く禁じられていたため、救急車を呼ぶことはできず、下請け会社の担当者を呼んだ。下請け会社の社員は携帯電話を持っているが、勝手に救急車を呼ぶことはできない。さらに上の担当者を経て、ようやく「アマゾン様」がお出ましになり救急車を呼んだ。

 倒れた人を前にして、“伝言ゲーム”にかかった時間は約1時間。

 女性は搬送された病院で息を引き取る。享年59。

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 死亡届けに記載された死因は、くも膜下出血。

 80代になる亡くなった女性の母親は、私の取材に、亡くなった当日の朝の様子をこう語った。

「いつも通りで、全然変わったところはありませんでした。残業があるならやってくるから、と言って家を出ていきました。体調を崩していたかですか? それはなかったですね。いたって健康な子で、アマゾンで働いて4年ぐらいになるんですが、その間、病気で休むことはありませんでした」

 女性が登録していた孫請け会社の担当者が、母親のもとに持ってきた香典は3万円。

 過酷な労働環境は、アルバイトだけではない。封建時代の殿様のようにあがめられていた「アマゾン様」もまた、過重労働の犠牲者だった。

米アマゾン・ドット・コムの物流施設に掲げられた同社のロゴ(フランス・オニー) ©時事通信社

 正社員として働いていた40代の男性は、上司によるパワハラによって自殺寸前にまで追い込まれている。突然の人事異動で、まったく未知の分野の担当になった男性には、引継ぎ資料もなく、トレーニング期間もなかった。

 上司の教えを乞うと、「甘ったれたことを言うな。自分でやれ」や「オレに教えてほしかったら、家庭教師代を払え」との暴言が返ってきた。