祖母が外に飛び出し、糞尿まみれで徘徊して…
――ベースの意地クソ悪さが、認知症によってブーストされたと。
ミンミコ 母を刺そうとしたときは、「そんなに母のことが嫌いだったのか」って驚きました。あと、糞尿地獄だったし。家のあちこちに撒き散らすんですよ。
で、満腹中枢に支障が生じちゃってたみたいで、メチャクチャ食べるから、メチャメチャ出す。「なんだって、こんな量が出るんだ」ってビックリするくらい出す。
――オムツは。
ミンミコ 穿かせても、溢れ出しますよ。だから、ひどく暴れているときは、おばあちゃんの部屋から出さないようにしてました。おばあちゃんの部屋のドアノブにロープを巻き付けて、その前にあった階段の手すりにロープを括り付けて。
閉じ込めるしかないんですけど、本当に心苦しいんですよ。やっぱり、自分のおばあちゃんだから。「出して! 出して!」と叫びまくって、壁とかドアをドンドン叩くんですよ。それが辛くて、辛くて。でも、何をするかわからないし、外に飛び出したら糞尿まみれで徘徊しちゃうし。
母は追い詰められたストレスで氷食症に
――おばあさんは、おいくつでした。
ミンミコ その頃は84歳とか85歳だったかな。
――おかあさん、ストレスで倒れてしまいますよね。
ミンミコ 私が大学生の頃、氷食症になりました。おばあちゃんは暴れるし、お金はないしで、かなり追い詰められてたみたいで。氷を1日中ずっとガリガリ噛じってるんですよ。
子宮筋腫で倒れてもいます。出血多量で救急車を呼ばなくちゃいけないほどで。そういう生死を分かつ状況なのに、父親はエッチなやつを見て「ヘヘ~ッ」って。散歩行ったり。行動が支離滅裂でした。
母にはずっと「離婚して」と言っていたけれど…
――おかあさん、離婚などを考えても良さそうですけども。
ミンミコ 高校の頃からずっと、母には「離婚して」って言ってたんです。私は父がAVを見出して「もう無理」となってたので。だけど、母はまだ父に情があるから離れられない、みたいな。
執着みたいなものもあったかも。結婚して20年という長い時間積み上げてきたものを崩すのが怖かったんじゃないかなって。お金がなくなり、夫もいなくなりといった感じで、だんだん消えていくことが。
あと、母の実家も大変だったんですよ。おじいちゃんも気難しいし、おばあちゃんも介護が必要になってしまって。おばあちゃん、筋萎縮性側索硬化症(ALS)という病気で動けなかったんですよ。だから、母は実家に戻っても辛いし、ほかに行くところもないし、行き詰まって頭が働かないというか。
撮影=三宅史郎/文藝春秋