給料だけもらっている社員って一番寒い
―― 今から思い返すと、自分ではどんなADだったと思いますか?
芦田 たぶんかなりトガってたと思いますね(笑)。生意気というか、とにかく早くディレクターになりたかったですから。でも、当たり前ですけどテレビって局の社員だけで作ってない。今やってる『あいつ今』も50人ぐらいスタッフがいるんですけど、社員は1割ぐらい。そうか、番組って外部の方に支えられてできてるって、新入社員なりにすごく感じたんです。これは原点ですね。
―― 社員と制作会社スタッフには、給料の差とかシビアな面もあると思います。そのあたりはどんなふうに考えていいたんですか?
芦田 仕事をしない上に出来なくて偉そうにして、それで給料だけもらっている社員って一番寒いと思うんです。それだけは絶対になるまいと決めてました。だから、とにかく謙虚に、言われたことが100だとしたら、100じゃなくて120やるっていうのを肝に銘じてました。
―― でもADって、過酷な現場だろうと想像するんですけど。
芦田 極論ですけど例えば編集中、深夜の2時とか3時に、「コーヒー買ってこい」とかディレクターに言われたとして、そこで「めんどくせえなあ」感出しても何も生まれないので「え? いいんですか買いに行って? その仕事最高です!」っていう逆に変なテンションで前向きにやりきるぐらいの気持ちでした。ここ越えればいずれ自分の番組持てると思えれば耐えられましたし、そうすると、「あいつ社員だけど、とりあえず頑張るっぽいぞ」っていう空気が出来上がってきて、自然と仕事が降ってくるんですよ。それを120でこなしてると、レベル1から2に上がる。すると「あいつ、あれを完璧にやるから、次これやらせてみよう」って。その繰り返しでしたね。とにかく自分で番組を作りたかったから、ADからディレクターへの最短距離をどう進むか考えて、謙虚に、やれることを全部やってました。
上司からウザがられるくらい企画を出していた
―― 理不尽な要求もあったんじゃないですか?
芦田 たまにあります。ただ、1個だけ決めてたのが、150パーセント反論して勝てると思った時は反論するということ。全部言いなりになっちゃうと、さすがに仕事が回らなくなっちゃうので。結局、反論したのは数えきれるほどしかありませんでしたが。
――ADの仕事をこなしながら、やりたい企画も温めていたんですか?
芦田 企画は積極的に出してて、「お前、出し過ぎ」って上司からウザがられるくらいでした。「考えて出してる? 成立しないよ」「とにかくやりたいんで」みたいなやり取りしてましたね(笑)。
―― 年次うんぬんではなくて、ADとして優秀だとディレクターになるのも早いものなんですか?
芦田 一概には言えないと思います。だって『しくじり先生』を立ち上げた後輩の北野(貴章)は、AD時代、自分がダメダメだったということをキッカケに『しくじり先生』という企画を書いて成功させたわけですし。
―― 2年下の後輩ですよね。
芦田 そうです。年齢は同じなんですけど。特にADを束ねるチーフADって、情報を整理するとか、全体を見てADのモチベーション平衡に保ったりっていう、管理や整理的な能力が求められる仕事なんです。でもたぶん北野はそういうことが苦手だった。でもディレクターとして才能が開花した。