チーフADって育てる仕事も担ってるんです
――芦田さんはチーフADをどれくらい経験されたんですか?
芦田 僕はゴールデンで『珍百景』『仕分け』2つの番組のチーフADをやりました。下につくADはほとんどが制作会社の方たちなんで、いろんな人がいるんですよ。だから、気遣いの方法やチームの束ね方も学べたし、個性的なディレクターや演出家とADの中間にいる立場なんで、「この文化は個人的には効率がいいと思わないから、俺がもし自分の番組を持てたらこうしよう」とか、自分が将来ディレクターになったらどうするか、イメージもいろいろしてましたね。
―― チーフADって何人ぐらいのADを束ねるんですか?
芦田 番組によりますけど、『珍百景』や『仕分け』の時は15人ぐらいいましたね。『あいつ今』のADも同じくらい。僕がチーフADの時は社員ADはいませんでしたが、チーフADって育てる仕事も担ってるんです。次の後継者を見つけないと自分が上に上がれないですからね。だから、『珍百景』の時は、全ADの動きを完璧に把握するためにADたちに作業日誌を書いてもらって提出してもらっていました。その日の計画をあらかじめ書かせて、それを全部クリアできているか、クリアできていないか1日の終わりにチェックする。
―― 作業日誌を書かせるのは芦田さんのアイデアだったんですか?
芦田 そうですね。ADがちゃんとやってくれないと怒られるのは僕なんで、どうにかしてそれを避けたかったんです(笑)。そのときのADが今、『あいつ今』のディレクターになったりしてるんで、育ってくれてるのはうれしいですよ。
初めての特番企画と、アンガールズ田中の再ブレイク
―― 3年目に出して初めて通った特番企画というのは、どんなものなんですか?
芦田 『キャラブレイク』っていう番組です。僕、もともと『めちゃイケ』が好きだったんで、情報性のないバラエティー、笑いだけに特化したものをやりたいと思ってたんですが、まさに自分のやりたいことを初めてできた番組でした。ザキヤマ(山崎弘也)さんとおぎやはぎの小木さんとビビる大木さんが3人で、ちょっと伸び悩んでる人をひたすらいじり倒して、そこから新しいキャラを見つけてあげようっていう番組です。
――たとえば誰をブレイクさせたんですか?
芦田 アンガールズの田中さん。当時、キモ可愛いブームが落ち着いていた頃なんですが、あとでマネージャーさんに「実はこの番組に出たあたりから、またブレイクし始めたんですよ。芦田さん、早すぎましたね(笑)」って言ってもらえました。ザキヤマさんがかなりうまくいじってくれたんですよね。それまでの関係性あっての、愛のあるいじりで。
―― 2010年ですね。確かにその頃くらいから『アメトーーク!』や『ロンハー』にもたくさん出始めてますね。
芦田 その頃は保坂さんの下にいたんですが、保坂さんには内容について何も言われなかったです。「好きにやれよ」と。自分で企画を通してゴールまで行くことに初めて快感を覚えました。ロゴからテロップのフォントから音楽まで全部自分で決められるし、しかもそれを何万人って見る可能性があるメディアに流せるわけじゃないですか。しかも自分は給料をもらいながら。「最高じゃないか、これ。こんないい仕事ないぞ」って、その快感は今でも覚えてます。
―― 『あいつ今』は企画が通ったものでは何本目くらいなんですか?
芦田 4本目です。2015年、入社8年目に企画を出しました。実はこれが通るとは、僕自身思ってもみなかったんです。だって、高校のサッカー部の結婚式に行った時に、実際に「あいつ今何してる?」って思ったやつがいて、周りとすごく話が盛り上がったっていうのが提案理由なんですから。「あいつ」をテレビが探してくれたら楽だよなーって程度だったんですけど、まさか自分でもこんな大きな番組になるとは思いませんでしたね。
#2 テレ朝バラエティーのエース! 『あいつ今何してる?』はどうやって生まれたのか?
http://bunshun.jp/articles/-/7357
#3 『あいつ今何してる?』芦田太郎プロデューサーが語る「テレビにしかできないこと」
http://bunshun.jp/articles/-/7358
写真=深野未季/文藝春秋
あしだ・たろう/1985年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。2008年テレビ朝日入社。主にバラエティを制作する総合編成局第1制作部に所属し、『あいつ今何してる?』の演出・プロデューサーを務める。『雑学王』『検索ちゃん』『学べるニュース』『ナニコレ珍百景』『関ジャニの仕分け∞』などでADを経験。3年目に『キャラブレイク』で初めての企画演出を経験。その後、『関ジャニの仕分け∞』『関ジャム完全燃SHOW』などでディレクターを務めた。現在、『ロボット旅』『ファクトリサーチTV』も演出兼プロデューサーを担当している。