来週月曜、9月30日からスタートするNHKの連続テレビ小説『おむすび』では、主題歌にB'zの書き下ろしの新曲「イルミネーション」が使われる。

『おむすび』は橋本環奈演じる平成元年生まれのヒロインによる“平成青春グラフィティ”になるという。B'zは昭和の終わりの1988年に松本孝弘と稲葉浩志(こうし)によって結成され、平成に入るとヒット曲を連発し、CD総売上は現在までに約8300万枚を超えてぶっちぎりの日本一である。CDがもっとも売れた時代である平成を象徴するアーティストとして、今回のドラマへの起用はまさにふさわしい。

B'zの松本孝弘(右)と、稲葉浩志(B'zの公式HPより)

還暦を迎えたボーカル・稲葉浩志

 そのB'zで作詞とボーカルを担当する稲葉浩志は、きょう9月23日、60歳の誕生日を迎えた。稲葉はB'zの活動の一方で、1997年の『マグマ』以来、ソロアルバムも折に触れて発表し続けてきた。今年6月には10年ぶり、6枚目となるソロアルバム『只者』をリリースし、これに合わせて全国ツアーも行った。今回のツアー中の先月13・14日には、自身の故郷である岡山県津山市でもソロでは初めてライブを開催し(B'zでは7年前に行っている)、2日間で全国から約1万6600人と会場の津山文化センターの座席数を大幅に超えるファンが現地に詰めかけ、会場周辺でイベントを楽しんだという。

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 最新のソロアルバムのタイトルとなった「只者」は通常「只者ではない」という具合に打ち消しの語をともなって使われるが、それをあえて単一でタイトルにしたのがキモである。稲葉がこれを思いついたのは、昨年、デビュー以来の代表的な詞をまとめた『稲葉浩志作品集「シアン」SINGLE & SOLO SELECTION』(KADOKAWA、2023年)に収録するインタビューで自分のことを振り返るうち、次のようなことに気づいたからだという。

岡山県津山市出身の稲葉浩志 ©時事通信社

アーティストとしての普通さにコンプレックスがあった

《僕は自分の、いわゆるアーティストとしての普通さにすごくコンプレックスがあったんですけど、そうやって喋ってるうちに、どこをひっくり返しても普通なんだってことを再認識したんです。そしてもう逆に、それでいいなって今さらながら強く思うようになったんです。(中略)そしたら、僕、タイトルを考えるのにいつも四苦八苦するんですけど、でも今回は〈只者が作った曲を集めました……みたいな感じでいいじゃん〉って、思いついちゃったから提案したんです》(『音楽と人』2024年7月号)

 奇をてらったわけではなく、本当に自分を普通だと思っているところに稲葉浩志という人の実直さがうかがえる。そもそも稲葉は自らの意志で作詞を始めたわけではない。B'zの結成に際し、ギタリストでありプロデューサーである相方の松本から任されたのだ。