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「人生はクローズアップで見ると悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇だ」

 同じ状況でも、自分が巻き込まれそうなほど近くで見ていると辛いけれど、遠くから心に余裕を持って見てみると、くすっと笑えたりほっこりしたり……。そう、私はまさに、この名言を自分の身をもって、体感したわけです。

映画『ぼけますから、よろしくお願いします。』公式サイトより

認知症の肉親の介護をしていると…

 今、ご家族の介護をされている方にも、この「ヒキで見る」という方法はおススメです。「カメラを持って見てください」とまでは言いませんが、自分がカメラを持ったような気持ちで、介護で煮詰まった気持ちをスッと引いて、客観的な視点で見てみるだけで、ずいぶんと見え方は変わってくるはずです。

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 もしかしたら、ひとつ深呼吸をするだけでもいいかもしれません。それだけでも肩の力が抜けて、気持ちが楽になると思うんです。そうやって冷静になって、「ああ、自分は相手に寄りすぎて悲観的な見方をしていたな」と気づけたら、「じゃあ、ちょっと視点を変えて、別の角度から見てみよう」とか。介護者である自分がストレスで潰れないためには、そういう作業はとても有効だと思います。

 認知症の肉親の介護をしていると、ついつい近視眼的になってしまって、感情がマイナス方向に揺さぶられがちです。それはやはり、肉親だから。昔の颯爽としていたころの面影が強いからです。だから情けなくなってしまうのです。

「昔はあんなにちゃんとしていたのに、どうして……」

「何べん同じことを言うんだ……」

「どうしてそんな暴言を吐くんだ……」

 いちいち悲しくなってきます。相手は病気だから仕方ない、と頭ではわかっているのに、つい感情的になって声を荒らげてしまい、後になって「あんなこと言わなきゃよかった」と自己嫌悪に陥ったりするのです。私はもともとヘタレな性格なので、いくら自分がイライラしても母を怒鳴ったりすることはできないのですが、そのぶん自分の中にストレスが溜まってメンタルが崩壊しそうになったころもありました。

 ですが、番組の放送が決まってディレクターの視点で両親を撮り始めてからは、母に何を言われても、何をされても、前のようにドーンと落ち込むことはなくなりました。だって、娘として目を背けたい出来事は、ディレクターとしてはおいしいシーンなわけですから。「よし、こんなのが撮れた!」と、自分の中の半分ではガッツポーズができるようになったんですから。これは本当に予想もしなかった効果で、娘のあり方としては現金すぎて恥ずかしいことかもしれませんが、両親を観察して撮ることが仕事になって、明らかに私は救われたと思います。