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 あの最後のシーンで中居さんの涙を見たことで、想いを昇華できた人もたくさんいるはずです。全員が悲しみをこらえて終わるのもいいんですが、リーダーがひとりすべてを背負って涙を流すことによって、「これじゃ終わるに終われない」という気持ちを抱えていた人たちも、ギリギリ心の整理がついたんじゃないでしょうか。

 中居正広という人は、そういうふるまいを、計算や判断でやっているわけじゃなく、自分の気持ちの赴くままに任せていると見受けられます。その結果導き出される行動が、どこまでもまわりの人たちに優しい。彼は根っからのリーダーなのだと思います。

「おまえ最近、いろいろしゃべりすぎだぞ!」

 僕が放送作家をやめるときも、中居正広さんの気遣いと粋なはからいを、たっぷりいただきました。

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 2024年3月をもってやめると宣言したので、僕にとって3月31日が「放送作家最後の日」でした。その日、最後の100分間を生配信させていただくことになり、いろんな方々からの質問になんでも答えていくという内容で進めていました。

 途中でスタッフが、僕宛てに贈りものが届いていると言い出します。運び込まれたのは有田焼の茶碗でした。僕の家族全員分の名前が入った特注ものです。

 中居さんからの餞別でした。注文してからできるまで何ヶ月もかかるはずなので、ずいぶん前から用意してくださっていたのでしょう。こんなすてきなサプライズを用意していただいたうえに、中居さんは配信時間中に電話までしてきてくれました。

SMAP ©文藝春秋

 電話に出たとたん、中居さんは僕に向かって言いました。

「おまえ最近、いろいろしゃべりすぎだぞ!」

 僕が「小説SMAP」とうたい刊行した『もう明日が待っている』を、イジっていると僕は感じました。

「小説SMAP」をメンバーが読んでどう思うか

 中居さんがイジってくれたことで、僕はすごく救われた気持ちになりました。というのもこの本は、もちろん覚悟を決めて書いたものとはいえ、メンバーが読んでどう思うかは、当然気になっていましたから。

 中居さんが実際に読んだのかどうか、怖くて聞いたことはありませんが、僕が書いたこと自体は知ってくれていて、それを承知でイジってくれたのだと思いました。あのときの中居さんは、SMAPのリーダーとして電話をしてきてくれたと、僕は勝手に解釈しています。

 放送作家最後の日のこの出来事によって、僕もまた中居さんの大いなる愛情の内側にいられたんだと確認することができましたし、作家生活に小さいけれどたしかな「。」をつけることができました。

 まわりにいるすべての人間を、取りこぼさずに救ってくれるリーダー。それが中居正広という人なのだと思います。