2024年3月に放送作家を引退したのを機に、「小説SMAP」をうたった『もう明日が待っている』を刊行。SMAPの素顔を余すところなく描き出したのが鈴木おさむさんである。

 テレビの世界を離れて半年。いまこそ語れる「SMAP論」を、存分に披露していただこう。今回はSMAPのリーダー、中居正広について。あの「最後の放送」で見せた行動の意味とは。(全2回の2回目/前編から続く

中居正広

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ものごとを「俯瞰する力」

 僕は『SMAP×SMAP』に放送作家として番組開始時から関わっていましたが、木村拓哉さんとラジオをやっていたことがきっかけで入ったため、最初は中居さんのコントを書くことはありませんでした。でも、2年ほど経ったころ、SMAPのマネージャーだった飯島三智さんが、

「今度のコント、あなたに書いてほしいと中居が言ってたよ」

 そう教えてくれました。飯島さんはそのとき続けて、

「おめでとう」

 と言ってくれて、僕もすごくうれしかったのを覚えています。だって中居さんのプロデュース力は、いっしょに仕事をしているだれもがわかっています。皆が彼にすこしでも認めてもらえるよう、精進したくなります。

 中居さんの、ものごとを「俯瞰する力」はすさまじい。世の中がSMAPというグループをどう見ているか、彼には常にわかっていました。グループとメンバーへの愛が深いゆえ、実態を必死に見ようとしていたのだと思います。

「SMAPこそ、いちばんのゲストと考えて」

 2013年、『SMAP×SMAP』の番組企画として、メンバーだけで行く5人旅が実現しました。これを発案したのは中居さんでした。

 当時は『SMAP×SMAP』の裏番組に『しゃべくり007』が台頭してきたり、男性アイドルグループとして「嵐」が人気を博したりして、番組スタッフは危機感を抱いていました。

 僕ら制作陣は、もっとインパクトのあるゲストを呼ばなければ! と焦るばかりでした。それまで25年の歴史のなかで、日本のトップスターはもちろんのこと、マイケル・ジャクソンまで出演した番組ですから、数字をとるには大物ゲストが必要だという発想に凝り固まっていました。

SMAP ©文藝春秋

 そのとき中居さんだけは、そうじゃないとはっきり主張します。

「SMAPこそ、いちばんのゲストだと考えてほしい」

 と、訴えました。それぞれいろんな番組をやって活躍してる5人が、週に1回だけ全員そろうのがこの番組なんだ、SMAPが5人でいることを楽しむ意識を持ってほしいというのです。