映画『ラストマイル』が公開35日間で観客動員数324万人、興行収入46.3億円を突破するロングヒットを続けている。ドラマ『アンナチュラル』(2018年)、『MIU404』(2020年/ともにTBS系)の出演陣が一堂に会するという豪華さも話題になっているが、なぜ3作品はこれほど支持を集めているのか? その背景をライターの田幸和歌子氏が読み解く。

『アンナチュラル』の4年後に生まれた『MIU404』が、より挑戦的な作品だった理由、綾野剛と星野源演じる“バディ”の誕生秘話とは。(全3回の2回目/続きを読む

『ラストマイル』で3年半ぶりに集結した『MIU404』のメンバー(映画『ラストマイル』公式Xより)

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「男2人のバディもの」という依頼で生まれた『MIU404』

『アンナチュラル』の放送終了から2年後。脚本・野木亜希子、演出・塚原あゆ子、プロデュース・新井順子らを中心にした制作チームが再集結した。野木の「10年越しの企画」として誕生したのが、綾野剛と星野源W主演の『MIU404』だった。

 舞台は、警視庁・第4機動捜査隊(通称:4機捜)。働き方改革の一環で作られた架空の臨時部隊で、勤務は24時間制で次の常盤は4日後、「初動捜査の24時間」という限られた時間の中で事件解決を目指すのが仕事だ。

「伊吹」と「志摩」の“バディ”を演じた綾野剛と星野源(TBS系『MIU404』公式Xより)

 本作の出発点は、野木のもとにTBS系から「また『アンナチュラル』チームで何か作ってください」「男2人のバディもの」というざっくりした依頼あったことだったという(『アンナチュラル』の成功が切り拓いた10年越しの企画 野木亜紀子が語る、『MIU404』制作の背景—「Real Sound」2020年6月26日)。

『アンナチュラル』と比べて挑戦的な作品だった

 コロナ禍で撮影の中断も余儀なくされたというが、派手なカーチェイスもあるスピーディーな物語は躍動感たっぷりでスリリングだった。また、非常に完成度が高くまとまっていた『アンナチュラル』に対し、『MIU404』は挑戦的な作品でもあった。あえて1話ごとに演出のトーンを変え、あおり運転や虐待、外国人留学生の労働問題、女性の貧困、違法ドラッグ、フェイクニュースなどといった社会問題にも深く切り込んだ。

 重厚なテーマを扱いながらも、決して玄人向けの仕上がりにはせず、大ヒットに結び付けた要因には、キャラクターの魅力——人間関係の“エモさ”があったからだろう。特に、女性を中心に視聴者の心をとらえたのが、伊吹×志摩という「動×静」のバディだった。