1ページ目から読む
3/3ページ目

親子のような関係、シスターフッド…“名コンビ”があちこちに

 本作に登場する“名コンビ”はこの2人だけではない。警察庁長官の息子のキャリア新人・九重(岡田健史、現在は水上恒司)とベテラン班長・陣馬(橋本じゅん)の親子のような関係性。努力で得た実績も正しく評価されず、容姿や性別によるものと判断されることに憤りを感じる隊長・桔梗(麻生久美子)と、桔梗が守ろうとする裏カジノ事件の情報提供者・羽野麦(黒川智花)のシスターフッドも見どころだった。

TBS系『MIU404』公式Xより

  “バディ萌え”や“人間関係萌え”でテンポの良さを保ちつつ、事件の加害者・被害者それぞれの人生を深く濃く描く巧みさ。そしてそれらは表裏一体で「スイッチ」(誰と出会うか、出会わないか)で変わること、「スイッチ」1つで人生を間違えることはあっても、そこからまた人は変われるという“希望”を描いた『MIU404』。社会問題を扱いつつも「要素」の提示に終始せず、徹底した取材をもとにエンタメ作品に昇華させる――そうした野木の手腕が遺憾なく発揮された作品だった。

主題歌は『アンナチュラル』『ラストマイル』と同じく米津玄師が手がけた(TBS系『MIU404』公式Xより)

野木作品が与えた影響

 しかし、『アンナチュラル』『MIU404』などがヒットした影響からか、近年は作り手の得手不得手を問わず、とりあえず社会派のニオイだけ漂わせる……というような作品が増えてしまったようにも思える。エンタメとして定番ヒット要素をおさえつつ、社会問題も、人間ドラマも描くというのは、膨大な情報量を縦軸と横軸で縦横無尽に編む野木のような“超絶構成力”が求められるのだ。

ADVERTISEMENT

 映画『ラストマイル』が封切られたのは、そんなふうに、野木亜紀子という脚本家が描く物語の“強さ”を改めて感じていた最中のことだった。(#3に続く