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 韓国では、石破氏の歴史観への注目がやはり大きい。中道系の韓国日報も、21年に同社が開催した国際フォーラムの席で石破氏が語った言葉を引いた。「領土と歴史問題については真剣に議論するが、両国の共通の課題解決のためにはさらに協力しなければならない。歴史問題から目を背けるのではなく、長い時間をかけてじっくりと議論しよう」というもので、靖国神社に参拝したことがないことも強調した。

石破茂氏 ©文藝春秋

 進歩系のハンギョレ新聞も、日韓の歴史問題に対しては自民党の政治家の中では前向きな姿勢を保っていると評価している。しかし一方で「自民党の保守政治家として、日本政府の基本的な立場から抜け出すことは難しいだろう」とし、「靖国神社参拝はしないが、徴用工について(韓国の)最高裁判所が出した損害賠償判決は国際法違反として認めず、独島(竹島)領有権を主張していることからもそれが窺える。就任後は党内の保守派を今以上に意識する可能性があるだろう」と慎重な見方を示した。

 同紙の人物像の欄では、政界入りからの歩みを丁寧に追い、離党し復党したこと、党内の主流派を辛口で批判して非主流の道を歩んできたこと、2020年には安倍晋三元首相のコロナへの不誠実な対策を批判して「このままでは自民党が終わる」と批判したエピソードなどを紹介している。

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 また、日本では珍しいクリスチャンであること、そして日本政界きっての鉄道マニアであることにも触れていた。

©︎JMPA

自衛隊の憲法明記やアジア版NATOには懸念の声も

 歴史観などについては概ね肯定的な評価だったが、石破総裁の専門である安保分野については警戒感が漂う。東亜日報は「画期的な変化は難しいだろう」とし、「防衛大臣も務めた安保専門家だが、自衛隊の憲法への明記やアジア版NATO推進など韓国が簡単には受け入れがたい主張もしており、これが韓日の葛藤の火種にもなりうる」と牽制した。

  ハンギョレ新聞も「自衛隊を国防軍として規定する憲法改正を主張するなど安保政策についてはタカ派」と紹介。進歩系のMBCは「日本の石破 アジア版NATO 核共有論争 米国と摩擦」と報じている。