文春オンライン

1000人以上にがんを告知した医師が語る「がんで不幸にならない方法」

森山紀之医師インタビュー #1

2018/05/24
note

「完治」よりも大事なこと

──心を落ち着かせるためのよりよい方法があれば教えてください。

森山 私は「完治」よりも「がんと共に生きる」という気持ちが大事だと思っています。だから、まずはがんであることをしっかり受け入れることがすべての始まりだとお伝えしています。たとえば、完治の可能性が高い早期がんの場合でも、治すためには手術や抗がん剤や放射線などの治療が必要です。治療は長期間にわたることもありますし、転移が広範囲に広がっている場合はなおさら、「がんを克服しよう」というよりも、「がんと共に生きよう」というところへ気持ちを持っていくことが大事だと思っています。

 

──でも、どうしても受け入れられない場合もあるのでは。

ADVERTISEMENT

森山 まずは、自分がどうなってしまうかではなく、自分が今なにをすべきかを考えるようにしてください。だいたい、「がん」という名前が「ガーン」という感じがしてよくないんですけれど(笑)、人間の想像力は悪い方へ広がりやすいので、受け入れができない人は、これから起こる最悪の事態ばかりを想定してしまうことが多いんですよ。

 たとえば、胸の痛みを訴えて「乳がんじゃないか」と来院された若い女性の場合ですが、「心配はないと思いますが、乳がんだといけないので、念のため精密検査しましょう」と言ったら、付き添いの母親が「やっぱり乳がんかもしれないんだよ!」とパニックになって、2人そろって診察室で号泣してしまったことがありました。これは極端な話ですが、似たようなケースはたぶんたくさんあると思います。

©iStock.com