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1000人以上にがんを告知した医師が語る「がんで不幸にならない方法」

森山紀之医師インタビュー #1

2018/05/24
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 がんと診断されただけで絶望したり落ち込んだりする人がいる一方、がんを受け入れ、がん患者としての日々を幸せに過ごすことができる人もいます。人気テレビ番組や雑誌など、メディアへの登場も多く、旧国立がんセンターで、がん予防・検診研究センター長として1000人以上の患者にがん告知をしてきた森山紀之先生に、がんで不幸にならないためのアドバイスをお聞きしました(全3回の1回目/#2、#3へ続く)。

森山紀之医師

がんと告知されたら「魔の2週間」のことを思い出してください

──今は「2人に1人ががんになる時代」といわれ、がんは昔ほど特別な病気ではなくなりましたが、それでもまだ「がん」と診断されることは多くの人にとって恐怖と苦痛を伴うものですか。

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森山 私はこれまで、1000人以上にがんを告知してきましたが、実は「がん」と診断されて平気でいられる人は、そんなに多くありません。告知時は治癒率や治療法なども併せてお話しするのですが、「がん」と聞いただけで思考が停止してしまうのか、あとの私の言葉はまったく耳に入らない方がほとんどです。

©iStock.com

──「がんと言われただけで、頭が真っ白になり、何も考えられなくなった」という話もよく聞きます。

森山 自分ががんと言われて落ち込まない方はいません。たとえ治癒率の高い早期であっても、絶望して寝込んだり、家族にあたり散らしたり、事実から目を背けたり、うつ状態になりかけたりする方も大勢います。でも、このひどい状態は、だいたい2週間で落ち着きます。告知を受けた直後の大混乱を経て、頭を整理し、なんとか受け入れることができるようになる。この精神的な落ち込みの期間を、私は「魔の2週間」と呼んでいます。

──「魔の2週間」ですか。

森山 誰であれ、どんな状況であれ、「がん」と診断されて取り乱したり落ち込んだりするのは当然です。だから、あなたやあなたの大切な人ががんの告知を受け、落ち込んだりショックを受けたりする状況になった時には、「ああ、これが『魔の2週間』か」と思い出していただきたいんです。渦中にある時はとても苦しいと思います。でも、2週間もすれば必ず心は落ち着き、光がさしてきます。