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「難民は締めつけるが、社会保障も充実させる」という新興勢力

 そんなドイツは今後どのような道に進むのか。

 ひとつ明らかなのは、右も左も「主要政党」の支持率が落ちていることだ。これまでのドイツ社会の「主流」を形成してきただけに、与野党あわせてその政治的カタマリが信任を失うのは仕方のないところだろう。

 では、伝統的な政党から離れた票はどこに向かうのか?

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 その筆頭候補はポピュリズム色の強い右派政党AfDだろう。2024年9月のドイツ東部州議会の諸選挙でさらに党勢を拡大したこともあり、伝統的政党へのチャレンジャーとして知名度が高い。しかし内情として「立ち位置を右派ナショナリズムに振り切った」ことの副作用がふくらんでいるのも事実だ。ありていにいえば「いまの難民政策には反対だが、右派ナショナリズム性は嫌い」という有権者にとって、AfDは適切な受け皿とはいえない。

「農家なくして食べ物も未来もない」というデモも起きるなど、ドイツでも格差は広がっている ©GettyImages

 そこで「AfD同様に難民は締めつけるが、社会保障も充実させる」という路線の新政党が爆誕している。旧東独からの政治的流れを有する左派党の勢力を食い荒らしながら拡大を続けるヴァーゲンクネヒト新党である。

 このような形でドイツでは、「これまであまり無かった組み合わせ」で潜在ニーズに刺さろうとする新党が台頭し、既存政党も路線変更を余儀なくされるケースが目立ってくるのではないかと考えられる。

 気になるのは、起きているムーヴの多くが「基本的に移民や難民は抑制」主義であること、そしておしなべてポピュリズムに立脚していることだ。この傾向はドイツに何をもたらすか。

 そんなわけでドイツの「EU脱退」がリアルかつ真剣に議論される展開も、そう未来の絵空事ではないだろう。いずれにせよ、90年代から2000年代前期までの「意識高い系と経済強国っぽさが併存していた」ドイツは、おそらく終わったのだ。それを前提に堂々と思考できる人間だけが、未来を語れるのかもしれない。