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良い記事とは「資料として活字に残せるもの」

――『盤記者!』には「良い記事とは何か」と主人公が頭を抱えるエピソードが出てきますが、お二人にとって良い記事だったと思うものがありましたら教えてください。

世古 そうですねぇ。私自身の体験をつづった「30代女子の将棋ことはじめ」と答えたいところですが、やはり豊島先生のインタビューですかね。中日新聞は、年初めに藤井先生のインタビューを載せていまして、私が豊島先生も載せるべきだろうと、年度初めに昨年度を振り返っていただく形でインタビューをして掲載していたものです。3回くらいやりましたかね。タイトルを獲得したときも失冠したときも、お時間をとっていただき、丁寧に答えていただきました。

――ご自身でも良い記事だったと。

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世古 『盤記者!』でも「良い記事」とか「良い記者」で悩む姿がよく描かれていましたが、本当に良い記事とは何かと悩むことは多いです。私が、豊島先生の記事が良かったと思えるのは、資料として残したいという気持ちがあったので。

『盤記者!』より ©松本渚/文藝春秋

――資料として?

世古 将棋って400年の歴史があるじゃないですか。そんななか2010年代から20年代って、AIが出てきたこともあり戦い方が大きく変わった転換期だったと思っていて。豊島先生って、そこでAI研究を取り入れたり、対人研究をやめたり、力戦調で戦ってみたりなど試行錯誤されていると思うんです。そんな転換期における第一線の棋士のことばを一言でも引き出して、活字に残したいという気持ちがありました。そんなことを豊島先生にも言って「そう思っているのでいっぱいしゃべってください」って伝えたら苦笑いをされていましたけど(笑)。

 

――ふふふ(笑)。豊島先生って饒舌なんですか?

世古 いやー。難しいと思います。

瀬戸 私もがっつり聞いたことはないですが、ことばを引き出すのは難しそうだなって思います。

世古 担当を6年ちょっとやってきて、「よし!」と思えるほどのことばを引き出せたのは、一言、二言しかなくて。ただ具体的に聞けば誠実に答えてくださるので、こちらの勉強が問われるんです。年度末は、「豊島先生からどれだけことばを引き出せるか勝負!」と思っていましたから、1年間、観戦記も全部チェックしてがんばろうって気持ちでいられました。

――それを文字に残していくのも難しいですね。

世古 紙幅も限られているので。ネットでもしっかり書かれている瀬戸さんが、すごく羨ましくって。おもしろいし、いいなって。

――瀬戸さんの記事はチェックされている?

世古 チェックしています! よく見てそれを取材のネタに使ったりもしています。