主人公は、自分たちのちょっとだけ前を走ってくれている存在
――今日は『盤記者!』の作者である松本渚さんも同席されているので、マンガの感想をお聞きしたいと思います。松本さんは、この連載が始まる前、世古さんの取材をされたんですよね。
松本 そうです。ですから第1回は、かなり世古さんを意識した流れになっています。
世古 いきなり将棋担当を命じられる状況は、マンガの設定に耐えられるものだったんだと思いました(笑)。
――感想はどうですか?
世古 いやぁ、篠崎記者がすごい!と(笑)。あの記者の素直さと勉強を怠らず、「良い記者とは何か」と悩みつつも前進していく姿には「こうなれたらいいな」と思いました。あと篠崎記者は盤をもって取材するじゃないですか。私も観戦記などを見て、その一手について聞いたりはしますが、実際に盤を並べて聞くって怖いですよね。
瀬戸 怖いですよ! できない(笑)。
世古 できないですよね(笑)。そんな熱意がすごいなと。取材する側を取り上げてくださったのがありがたいですし、取材する側もこういったおもしろい世界だったんだと気付かされました。記者側も葛藤がありますし、担当棋士が負け始めるとどう書けばいいのかは本当に難しい。でも迫りたい、本音を引き出したいという思いもあるわけで。
――松本さんは、瀬戸さんにも取材をされたんですよね。
松本 たしか第3章を書くにあたって取材をさせていただきました。
瀬戸 最初読んだときは、自分と同じようなことを思っているなと感じていました。あとで、世古さんがモデルと聞いて「なるほどな」って思ったんですよ。
世古 設定だけですよ(笑)。
瀬戸 ふふふ(笑)。主人公の篠崎記者は、ちょっとだけ前を走ってくれている存在という感じで読んでいました。でも、途中から描かれている葛藤がリアル過ぎるようになり、篠崎記者はその葛藤を解決していきますけど、自分は解決できるかわからないので、読むのが苦しくなったときもあったんです。でも、今はまた先を走ってくれている存在として、そこを目指せばいいんだ、こうなっていけば良い将棋記者だ、理想像を示してくれる存在だなって思います。
松本 私は、どうやったら記者のお二人に追いつけるだろうって思って描いていました。
世古 追い越していますね(笑)。
――では、お二人の見解として、篠崎記者はとてもいい記者であると?
世古&瀬戸 とてもいいです(笑)。
――将棋記者を志す方がいたら、ぜひこれを読んでもらうといいですね。
瀬戸 ほんとうに。
写真=橋本篤/文藝春秋
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