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瀬戸 私は、棋士の先生で挙げるとすれば、中村太地先生(八段)です。将棋担当になった直後、タイトル戦では、棋士の先生に解説をいただいていました。高野秀行先生(七段)と高見泰地先生(七段)と太地先生にお願いしたんですが、みなさんすごく丁寧に教えてくださったんですよ。

 太地先生は、あのときA級に上がった直後で、5カ月くらい勝ちがない連敗の最中でした。きっと辛い時期だったはずなんですけど、丁寧に答えてくださって……。

――ありがたいことですね。

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瀬戸 それで今「王手報知」という棋士の先生のインタビューコーナーをやっているんですが、その第1回(もがくA級棋士・中村太地八段、喜びの昇級から8連敗 「もう一生…」の先へ)に登場していただきました。それでインタビューしたからにはと、昨年度の順位戦、太地先生の対局はほとんど取材に行ったんですよ。

 瀬戸さんが書いた中村太地八段のインタビュー記事には、こんな一節がある。

《A級は「今まで見ないようにしていた自分の弱さと向き合わなきゃいけない場所」と中村はいう。》

 深夜に及ぶ順位戦の取材にすべて行く。その熱意は、こんな苦悩を話してくれた感謝からも生まれたのだろう。

「女性が将棋を指してみようって思う記事ってどんなものだろう」

――先ほど西山さんの名前が挙がりましたが、今、棋士編入試験を受けている最中です。やはり特別な想いで見ておられますか?

瀬戸 西山さんには思い入れが強すぎてことばが難しいんですけど……、西山さんが第一号の女性棋士になってほしいですね。ただ、西山さんは「棋士になりたい」のであって「女性棋士になりたい」わけじゃないと思うんですよね。今まで女性は誰も棋士になっていないこともあり、西山さんはいろんなものを背負っている。だから自分の夢を叶えて、その背負っているものが軽くなるといいなって思っています。

世古 今は将棋の現場を離れていますが、福間先生が棋士編入試験を受けられたときは、取材を担当しました。そのとき福間先生が記者会見で「女性棋士が普通のことになればいい」っておっしゃっていて、本当にそうだなと思ったのと同時に「女性記者も普通になればいい」って思いました。

中日新聞の世古紘子記者

――なるほど。

世古 この二つの根っこは同じで、将棋を指す女性が圧倒的に少ないことだと思います。だから、福間先生が編入試験を受けてからはずっと、「女性が将棋を指してみようって思う記事ってどんなものだろう」って考えながら記事を書いてきました。女性の編入試験と聞くと、今でもこんなことを思い出しますね。