9月7日に行われた第75回三段リーグ17、18回戦の結果、最終成績を15勝3敗とした獺ヶ口笑保人と14勝4敗の吉池隆真の2人のプロ入りが決まった。

 獺ヶ口はマジック1の状況で17回戦を落としたが、最終18回戦を勝っての自力昇段。「頭をカラにして2局目を迎えることができた」と振り返る。また吉池は17回戦開始の時点では他力だったが、1局目を自身が勝ち、競争相手が敗れたことで、最終18回戦に自身の昇段が懸かっていた。「最終日は伸び伸び指して、結果を待とうと思っていました」と語った。

 両者は10月1日付で四段へ昇段した。

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プロ入りを決めた獺ヶ口笑保人(左)と吉池隆真(右)の両新四段

現役の医学部大学生としても注目

 新四段に対して行われる共同インタビューでは、毎回それぞれの個性があふれたコメントを聞くことができるが、特に今期の新四段は注目を集めたのではなかろうか。

 まず獺ヶ口笑保人四段。名前は「おそがぐち えほと」と読む。獺ヶ口の名字の由来は福井県の地名にあるそうだが、一目で読むのは結構難しい。筆者は彼が関西所属だった奨励会級位者の頃、主に関西で活動する観戦記者の方から聞いて知ったのが最初である。名前の由来は「笑いを保つ」ことと、努力を意味する英語の「effort」からきているそうだ。共同インタビューでも名前に関する質問が多かった。

 もう一つ、獺ヶ口が注目を集める理由は彼が現役の大学生として医学部に在学していることだろう。医師と女流棋士を両立している伊奈川愛菓女流二段や、女流棋士でかつ医学部生の森本理子女流2級の例はあっても、これまで医学部に通う大学生が奨励会を突破して四段になったケースはない。

獺ヶ口笑保人新四段

医師を目指したのは将棋がうまくいかなかった結果

 しかも獺ヶ口の凄いところは、将棋の道に挫折しかけた時に医師を目指したということだ。

「最初から両立は考えておらず、将棋がうまくいかなかった結果です。棋士になるのが厳しいと思ったときに仕事を考えて、人の役に立てるというと傲慢ですが、自分が何かできればと思いました。一番大変と思ったのはやはり受験の時期で、案の定両立はできませんでした。大学に入ってからも年齢制限が迫っていたので、時間を有効に使おうという意識がありました。医師免許はまだですが、取りたいと思っていますし、棋士と医師の両立ができたらと思っています」