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もう「お前の代わりなんていくらでもいるんだ!」などという時代ではないどころか、これから「若い人手」が何よりも貴重な時代に突入することになる。

2004年からわが国は人口減少傾向へと移行し、2010年ごろから「数年以内に抜本的な少子化対策を実施しないと、取り返しのつかない事態になる」と警鐘が鳴らされ始めた。

そこからは、東日本大震災の復興本格化、その後の東京五輪・パラリンピック開催決定という流れの中で、「明らかに人手が足りない」という認識が実感値として広がっていった感がある。

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負荷が大きい「人口オーナス期」に突入

決定的な流れの変化は、大手広告代理店で起きた社員の過労自殺事件であった。これ以降、労働基準監督署もサービス残業や名ばかり管理職の問題を厳しく指導するようになり、世間の目も厳しくなっていき、法律改正への後押しとなった面があると思われる。

戦後日本は長らく「人口ボーナス期」に恵まれていた。この時代には、大量かつ均一な商品やサービスが求められるため、男性ばかりで長時間労働する同質的な組織が大成功し、その状況に最適化した人事制度や雇用慣行を今まで使い続けてきた。

しかし、高齢者に比べて労働力人口が少ない「人口オーナス期」となり、モノがあふれてすぐに飽きられ、買い手も減少していく時代となっては、大量生産よりも「商品やサービスにイノベーションが起きること」「多様な発想が生まれること」「育児や介護などの制約条件があっても働き続けられる組織であること」の重要性が増している。

働き方改革が最優先の経営戦略になりつつある

また働く人の価値観も多様化し、報酬のあり方も決して「出世」や「昇給」ばかりでなく、「働く場所と時間」「副業」「ワーク・ライフ・バランス」などの「自由」や「柔軟性」が確保されている状態こそが魅力的な報酬と捉える傾向もある。

2015年ごろが一つの潮目であり、そのころから改革を実践してきた企業では、いま現在確実な成果が出ているところが多い。今後は働き方改革が単なる「福利厚生の一種」といった認識ではなく、「最優先すべき経営戦略」として位置づけられ、その流れに乗り遅れた企業は、採用困難化、人材流出顕著化など、着実に悪影響を被ることになるだろう。