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さらには、労働法制面でも大きな変化があった。2019年から順次施行された「働き方改革関連法」においては、労働基準法施行以来の画期的な「残業時間上限規制」や「年次有給休暇取得義務化」などを盛り込むという、これまでの議論の経緯から考えると相当に難度の高い結果が実現した。これにより、働き方改革に取り組むことは経営課題となり、労働環境改善の取り組みを進めることは必須要件となった。

悪質な企業名が毎月ネットで公表されている

厚生労働省は2013年9月から、離職率が高かったり、長時間労働で労働基準法違反の疑いがあったりする全国の約4000社に対して実態調査を開始。それを受けて2017年5月からは、重大で悪質な違反を繰り返し、改善が見られない企業の社名や違反内容を「労働基準関係法令違反に係る公表事案」として公表し始めた。毎月情報が更新されている。

働き方改革関連法施行当初、「物流・運送業」「建設業」「医療業」など一部業種では、業務内容の特性上、長時間労働になりやすい業態であることから、是正には時間がかかると判断され、時間外労働の上限規制適用が5年間猶予されていた。

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その猶予期限もついに本年終了を迎え、2024年4月1日以降は他業界と同様に、時間外労働時間の年間上限が制限されることとなった。今後は原則としてすべての業種が残業時間上限規制の対象となるため、「ウチの業界は特殊だから……」といった言い訳は通用しなくなるわけだ。

いまは労基署に駆け込む以外に方法がある

実際の統計数字で検証してみよう。労働関係法令違反の事業所に対しておこなわれる、労働基準監督署による「臨検監督」の実施数は、直近の30年間において、毎年だいたい16万~18万件程度で推移している。

その中で、法違反が発覚する「違反率」は微増傾向にあるが、一方で労働者からの申告に基づいて実施される「申告監督」の件数は、従前の毎年4万件超から、平成24年以降は4万件を下回っている。