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本門佛立宗務本庁(京都市)は取材に対し、このように答えた。

「昨年末に被害者本人から問い合わせがあり、ヒアリングをしました。本人(住職B)への聞き取りを実施しようと思っていた際に、逮捕されてしまったために、いまだに調査ができていません。なお、起訴された段階で住職は退任しています。本宗では一般的には、懲戒対象の事案が生じた際には審判調停委員会を立ち上げ、加害者本人からの聴取を経て、具体的な処分という流れになります。最も重い処分は僧籍剥奪です」

また、Bが住職を務めていた千葉県内の寺院に問い合わせると、男性が応対した。「弁護士に一任している」とだけ述べるにとどまった。

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仏教界の性加害は本件に始まったことではない。今年には天台宗の高僧らによる尼僧への性加害問題が発覚している。四国に自坊を持つ住職Cが、尼僧の叡敦さんを14年間にわたり監禁し、性暴行や恫喝を繰り返していたとされる。Cの師である大阿闍梨Dも、この行為を黙認していたとされる。天台宗務庁では現在、調査を実施している。

仏教界における性虐待は、水面下ではまだあると考えてよいだろう。今後、「Me Too運動」が広がりを見せていくこともあるうる。宗教界の自浄作用が早急に求められる。

鵜飼 秀徳(うかい・ひでのり)
浄土宗僧侶/ジャーナリスト
1974年生まれ。成城大学卒業。新聞記者、経済誌記者などを経て独立。「現代社会と宗教」をテーマに取材、発信を続ける。著書に『寺院消滅』(日経BP)、『仏教抹殺』(文春新書)近著に『仏教の大東亜戦争』(文春新書)、『お寺の日本地図 名刹古刹でめぐる47都道府県』(文春新書)。浄土宗正覚寺住職、大正大学招聘教授、佛教大学・東京農業大学非常勤講師、(一社)良いお寺研究会代表理事、(公財)全日本仏教会広報委員など。