109の店員になりたかった
ただ、事務所からはこのとき東京へ来なくていいと言われていたらしい。それでも上京したのは、渋谷の109の店員になりたかったからだという(仲里依紗『Palette』宝島社、2018年)。その後もファッションへの夢は捨てがたく、高校卒業後は服飾学校に進もうかとも考えたが、周囲から「無理だよ」と言われ、自分のなかにも不安があって断念し、のちのち悔やむことになる。
上京してからはローティーン向けのファッション誌『CANDy』の専属モデルを務めながら、CMやドラマに出演を始めた。高校2年生だった2006年には、アニメ映画『時をかける少女』でヒロインを演じて注目される。高校卒業後はさらに俳優の仕事が増えていった。当時から役の幅は結構広く、ドラマ『ハチワンダイバー』でミステリアスなメイド喫茶店員を演じたのと同じ2008年には、反対にメイド服を絶対拒否するパンチの効いた少女を映画『純喫茶磯辺』で演じた。ただ、駆け出しのころは「女優はこうあるべき」というイメージに悩まされ、《女優のお仕事における常識や自分の見られ方、周りの意見を気にして、やりたいことにストップをかけることも多》かったという(『non-no』2022年4月号)。
大きなエポックとなったダークヒロイン・ゼブラクイーン
そんな時期に出演したのが、映画『ゼブラーマン ゼブラシティの逆襲』(2010年)だった。彼女の役は、主人公のゼブラーマンと戦うダークヒロイン・ゼブラクイーン。ゼブラーマンを演じる哀川翔はアクション映画の大先輩とあって、足を引っ張ってはいけないと撮影中は必死だったという。
ワイヤーアクションも初めて経験した。監督の三池崇史は本番当日まで何をやるのか教えてくれず、ある日現場に行ったら巨大なクレーンが置かれているので「荷物でも運ぶのかな」と思ったら、そのクレーンに吊るされるのは自分だった……ということもあったとか。
ゼブラクイーンは人気歌手でもあり、殺陣とあわせてダンスのレッスンやボイストレーニングも受けた。歌で感情やセクシーさを表現するのが難しくて、レディー・ガガなどのミュージックビデオを観て研究した。正直、歌やダンスは苦手だったが、本番で《音楽がかかったら何かが降ってきたんです。恥ずかしいし、何やってんだろ自分?って感じだったのに、後から見たらこんなことやってたんだ!?って》思うほど役にのめり込んでいたという(『週刊プレイボーイ』2010年5月10・17日号)。