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 おかげで映画公開に際しては、《スケジュールも、チャレンジしたことも過酷だったのに、一度も嫌だと思わず、撮影期間中ずっと楽しかったんです。ここまで楽しめた撮影は、もしかして初めてだったかも》と振り返った(『仲里依紗×ゼブラクイーン写真集』宝島社、2010年)。俳優の仕事を面白いと思うようになったという意味で、同作は彼女にとって大きなエポックとなる。

「ゼブラクイーン」名義でCDも発売(「NAMIDA~ココロアバイテ~」/STUDIOSEVEN Recordings)

「壊れてしまうのではと心配したほど」役に入り込んだ

 このときには演技へのアプローチも確立しつつあった。上でも引用した写真集のインタビューでは、《役のことは常に考えてるけど、現場で衣装を着て、セットの空気に触れ、共演者の方とセリフを交わすことで、演技が生まれる、と最近、思うようになりました。あんまり作り込んだり、考えすぎたりして撮影に臨むと、不自然さが出てしまう。『時をかける少女』あたりから、その意識が強くなりましたね》と語っている。

 ここに出てくる『時をかける少女』とは、先述のアニメ版に続いてヒロインを演じた実写版(2010年)のほうである。同作の監督の谷口正晃によればこのときの仲は、《『役を生きる』ような芝居ができていました。生の感情を演技に乗せる野生の感覚があるんです》といい、中尾明慶演じる青年との別れのシーンを、あえてリハーサルせずに一発本番で撮ったところ、仲が蛇口を捻ったように涙を流すので、《あまりの役への入り込み方に、彼女が壊れてしまうのではと心配したほどです》と明かしている(『週刊文春』2023年2月23日号)。

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映画『時をかける少女』(2010年)

「あたし子供産めんのかな」→石垣島の撮影で…

 現在の夫である中尾とはこれが初共演だった。ただ、すぐに結婚を意識したわけではない。翌2011年には映画『ハラがコレなんで』で初めて妊婦役に挑戦したが、公開を前に撮影中を顧みて《あたし子供産めんのかなって、今から心配になるくらい大変でしたよ。正直、役だけでもう十分かも(笑)》とぶっちゃけ、《ひとりが好きだし、結婚願望もないですね。興味の向くまま風に流されて、一生バタバタして、人生それで終わりそう》とまで語っていた(『週刊文春』2011年11月10日号)。

2013年に中尾明慶と結婚。昨年、結婚10周年を迎えた(仲里依紗のインスタグラムより)

 しかし、このあと、ドラマ『つるかめ助産院』(2012年)で中尾と再び共演、撮影のため石垣島で3ヵ月間すごし、彼を含む共演者のみんなでしょっちゅう食事に行くうちに距離が縮まっていった。ちょうどこのとき彼女が演じたのは若い妊婦で、《産むか産まないか、命とは、みたいなのがテーマで、それもちょっとリンクしてます》と、作品の内容が中尾との関係にも影響を与えたらしい(前掲、『Palette』)。翌2013年には、妊娠がわかったことがきっかけで結婚する。