東京駅で倒れた男性のそばで、1人のアイドルが真剣な表情で人命救助に取り組む――。緊迫の様子を映した“37秒間”の動画で一躍、時の人となったのはアイドルグループ・NEOアラモードの北村舞香さん(27)だ。彼女は、世にもまれな“医師兼アイドル”の肩書きを持つ。

 男性の元へと駆け寄り「医療従事者がいない」と判断した緊迫の現場で、何があったのか。動画の拡散後「本当に医者だったんだね」とファンからの一言も受けた、反響と共に聞いた。(全3回の1回目/2回目に続く)

“医師兼アイドル”として活躍するNEOアラモードの北村舞香さん ©杉山秀樹/文藝春秋

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男性の手を握り意識、脈拍、呼吸を確認して…

――拡散された37秒間の人命救助動画は、広く注目されました。当時の状況から、教えてください。

北村舞香さん(以下、北村) アイドルのレッスンが終わって、東京駅を通りがかったときにたまたま遭遇して、人だかりの中に倒れている男性が目に入りました。誰も近寄ろうとしていなかったので、医療従事者がいないと判断して、男性のそばに近寄り「大丈夫ですか?」と声をかけました。

――そして、動画で記録されていたとおり、処置をされたんですね。

北村 はい、救急隊が来るまでの15分ほど、男性の手を握りながら「私が分かるなら、手を強く握ってください」と声をかけて、意識があると分かったので脈拍を測り、呼吸を確認して。いずれも正常だったので「今すぐの心肺蘇生は必要ない」と判断し、駅員さんに「救急車を呼んでください」とお願いしました。

アイドルでありながら、医者としての顔も持つ(写真=北村舞香さん提供)

――救急隊が到着するまでも、予断を許さなかったのかと思います。

北村 幸いにも意識があったので「どこか痛い場所はないですか?」「辛いところはないですか?」と声をかけ続けて、キーパーソン(病院との折衝などを代理する患者側責任者)がいるかどうかも尋ねて、駅員さんが持ってきてくれた紙とペンを使い、発言の内容を記録していったんです。男性からは「本当にありがとうねぇ」と、感謝の言葉もいただきました。