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「日本語がうまいですね」というようなマイクロアグレッションはたびたびあるが、日本で露骨に差別された経験はほとんどない。ただ、数が少ないからこそ、強烈に覚えているのもまた事実である。

「韓国人」「朝鮮人」「出ていけ」…

小学校1年生の頃、近所に住む同い年の男の子と遊んでいた時、急に「お前は韓国人だから」と仲間に入れてもらえなかったことがある。それまでは普通に遊んでいて、自分は友達だと思っていたのに。驚いて言葉が出なかった。悔しかった。

大学生の頃、道端で通りがかったおじさんに、「おい、朝鮮人だろ、お前」と急に言われた。差別用語を繰り返し言われた。500メートルくらい付きまとわれた。怖くて何も言えなかった。恐怖で体が硬直した。

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2年前、近所の居酒屋で、横のテーブルに座っていたおじさんが店主との会話で「あの辺の地域、朝鮮人多いやろ。俺、朝鮮人嫌いやねん」と話していた。抗議したが、無視された。店主が迷惑そうにこちらを見ていたので、足早に店を出た。

2015年ごろ、ヘイトスピーチの現場に行ったこともある。聞くに堪えない言葉がまき散らされていて、心底参った。十円禿げが頭にできた。「『出て行け』と言われているし、日本にはもう住めないのではないか」と、その時は本気で思った。

日本社会を信頼できたのは友人たちのおかげ

こういう差別の経験はたしかにあるが、日本で30年間生きてきて、この程度といえばこの程度である。個人的な経験を数えたら4~5回くらいだ。オランダに1年間留学しているとき、アジア人の見た目をしているだけで5回くらい差別的な言動をされた。それよりは頻度としてはずっと少ない。日本での差別で傷ついた経験があるのもたしかだが、両親や祖父母の世代と比べたら状況は改善していると思う。

僕は、日本での差別体験を強調する意図は全くない。優しくて親切な日本の友達に多く恵まれてきたし、差別から守ってくれた友人もいる。このような体験談に耳を傾けてくれる人はいつもそばにいた。嫌な体験をしても、日本社会への信頼を失わなかったのは、大切な友人たちのおかげだ。僕は運がいい。周りの人には心から感謝している。