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 巣鴨にある定期が発見された民家は、土地勘のある人物でなければ、来ることはない細い路地の奥にある。発見者の女性が貴重な証言をしてくれた。

「朝、花に水やりをしていたら、壁際に、黒い定期入れが落ちていたんだよ。名前を見たらカタカナでワタナベと書いてあったんだ。近所にワタナベなんて名前の人はいないから、警察に届けたんだよね。水やりは毎日の日課でね。前の日は定期券なんてなかったよ。酔っ払いが間違って捨てていったんじゃないかと思っていたら、まさかこんな大きな事件に関係あるとは思わなかったよ」

 この界隈に当時住んでいた人物か、もしくは友人、知人が住んでいた人物が捨てたということが考えられないか。

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ゴビンダ犯人説を崩す「定期券」の存在

 地元の住民に話を聞いてみると、事件後警察がこの界隈で聞き込みなど、した形跡はないという。警察にしてみれば、定期券を持った人物の存在は、ゴビンダ犯人説を崩す邪魔でしかなかった。当時、この付近を徹底的に捜査していれば、定期券に関連ある人物を見つけることができたのではないか。

アパートは神泉駅前にあって人通りが絶えない。この部屋に被害者は私娼として客を連れ込んでいた ©八木澤高明

 ちなみに、定期券が発見された場所の周辺には、1997年当時、イラン人やバングラデシュ人などが多く暮らしていた。特にイラン人は、違法テレフォンカードを販売したり、不法滞在をしながら暮らしている者も少なくなかった。

「当時は、ちょっと夜になると物騒なところはあったね。イラン人が店を閉めたあとの夜中に酒を売ってくれって来たんだけど、売らなかったら、自動販売機を壊されたなんてこともあったな」

 今も定期券が発見された現場周辺で酒屋を経営する男性が言う。そうした話がこの事件と結びつくわけではないが、何らかの事件の温床となり得る空気が、この町の周辺には間違いなく漂っていた。