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ふらっと入ってきた人に声をかけてみたら...

 声をかけてみたところ、同じ2階で営業している「新春シャンソン荘」という有名なバーのオーナーであった(「店の名前だけでいいじゃないですか」ということでお名前は省略)。

「きょうは僕、休みで。スタッフがやってくれてるんで、いま飲みにきたところ」

「ZZ BAR」のカウンター

 30代に見えたが、47歳だそうでちょっと驚き。店を開いたのは「2011年ぐらい」だが、もともとは2001年から味園の社員だったのだそうだ。「だからもう23年ぐらいいます、このビルには」。

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 だとすれば、管理会社の事情もおわかりかも。

「こうやってお店の人らに取材してるのはちょいちょい見ますね。事務所はもう突っぱねてる。取材が多すぎて、だいたい断ってるんですよね、新聞とかテレビとかも。もう手が回らないんで」

 やはりそういうことか。ともあれ20年以上ここにいるということは、寂しさもあるのでは?

「ZZ BAR」のマスターの写真も

「いつかは来るなっていうのはわかってた」

「寂しいけど、しょうがないでしょ。いままで、よくもってくれたほうやと思ってる。契約自体も、ずっとできませんよという感じだったんで、いつかは来るなっていうのはわかってた」

「『いよいよやな』ということやからね」とマスターの重田さんが加わる。みんな、似たような思いを抱きながら店を続けてきたようだ。ちなみに、店がなくなったあとのことは「ノープラン」だそう。

 さて、もう1軒、味園を代表するお店を訪ねてみよう。サブカル好きの方々から高い評価を受ける「深夜喫茶銭ゲバ」だ。店内はこぢんまりとしており、左右にテーブル席。

味園ビル内に構える「深夜喫茶銭ゲバ」

 伺ったとき、左奥のカウンターには女性がひとり座っていた。常連さんのようだが必要以上に話し込むこともなく、静かにこの雰囲気を楽しんでいるように見える。その向かいにいらっしゃった店主のムヤニーさんに、タイミングを見計らって話を伺った。

 「ZZ BAR」の重田さんと同じく、もとはお客さんだったようだ。19年前に脱サラして店を開かれたそうで、現在50歳。サラリーマン時代に味園の店で飲んでいるとき、「テナントも空いてたし」ノリで始めただけなのだとか。東京まで名前が聞こえてくる有名店だが、開店のきっかけは思いのほかラフだった。