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「深夜喫茶銭ゲバ」を始めたきっかけは...

「たぶん、長いだけですわ。だって、もともと僕、1、2年で店はやめるつもりやったんです。最初のころなんか人、誰も来いへんかったし。店一本で食えるわけないわ思うてたから。飽きたらやめようと思うたけど、3年ぐらいやってたら意外と楽しくなってきて。サラリーマンしながら始めたんで、最初は週末しかやってなかったんですよ。でもやってるうちに家賃を払えるようになったから、まあ食っていけるかなと思って」

独特な雰囲気の店内

 そこで会社を辞めて専念したものの、「平日誰も来んくて、この店で3年ぐらい寝泊まりしてましたもん。金なさすぎて」と当時を振り返る。しかし結果的には、うまくいったのではないだろうか。

「たまたまや思いますよ。もうなんか、いろんな偶然が重なってみたいな。あと名前がインパクトあるから、それで自然と、勝手に老舗になったんですよ」

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店主は「自分が居心地ええようにしてるだけ」と語る

 なにも考えず「好きにやってるだけ」。サブカルが好きなのでそっち寄りではあるけれど、「自分が居心地ええようにしてるだけなんで」とおっしゃる。しかし、自然体だからこそ、引き寄せられる人が多いのかもしれない。

 いずれにしてもテナントの方々はみな、味園ビルに強い思い入れを持っている。それは間違いないだろう。だが、みなさん、予想以上にクールだ。

味園ビルの閉館はふんわりとは聞いていた

「まあ、ふんわりとは聞いてましたし、いずれ終わるのわかってたから、あんまりびっくりもせえへんというか。上のホテルも5年前に閉まっちゃったから、その時点で徐々に終わっていくんやろうなとは感じていました。もう(開店して)19年なんですけど、契約するときに、『このビルぼろいから、いつまであるかわからんよ』っていわれてたんですね。だから、いずれ終わるのやろうなという感じやったんです」

 最初から終わりが見えていたから割り切れるのだろう。開店時に敷金・礼金が不要で、未経験でも30万円程度のお金とやる気さえあれば誰にでもできる。そのかわり、いつ終わりになるかわからないということを最初から知らされていたわけだ。

「深夜喫茶銭ゲバ」の店内

「そうそうそう。『急に出ていってくれとなるかもしらんから、金かけないほうがいいよ』ともいわれてたし。だから今回、『ついに来たか』みたいな感じで。(詳しいことは)全然わからないんですよ。取り壊すというのも噂だけで、公式になにか聞いたわけでもないし。(連絡が来たのは)ちょうどマスコミへの発表があったやないですか、あれの前日に電話が。だから『長持ちしたなあ』って思ってるぐらいで、もっと早い思てたから」

 こういう場所が消えることは残念だが、考え方次第では、いつ消えるかわからないからこそ人を惹きつけるのかもしれない。