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サードキャリアは○○

――看護師と作家は一見全く違う職業のように思えますが、両方ご経験されてみて、いかがですか?

秋谷 看護師時代に、人を客観的に見ること、感情的にならずに患者さんと心の距離を適度にとることが習慣になっていたので、無意識に人間を観察しちゃうんです。キャラの設定を考えるときや、執筆時もどこか冷静だと思います。これが良いことなのか分からないですけど……。あと、仕事のやり方は、看護師と作家で意外と似ているかもしれないです。看護師は、患者の急変が同時に起こるなど、限られた時間のなかで、優先順位をつけながら仕事をしなければならないので、そういう姿勢がしみついているんですね。ありがたいことに、最近は色々なお仕事のお声がけをいただいているのですが、無意識に「まず何から取り掛かるか」を頭の中で整理しています。それから、看護師時代に編み出した、パニックになったときに落ち着く方法もたまに使っています。「一回、スンッてする」というごく簡単なことなんですが(笑)。一瞬頭を真っ白にすると落ち着けるように体が覚えているみたいですね。

――執筆前に必ず行っていることなどはありますか?

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秋谷 何もないです。ぬるっと書き始めて、集中力がきれたら洗い物をしたり、ご飯を食べたり、猫と遊んだり。最近は複数の作品を並行して書いていて、先輩作家さんのお話を伺うと、頭を切り替えるために作品ごとにテーマソングを決めている方もいらっしゃるのですが、今のところ特に必要なくて。もしかしたら切り替えられていないのかもしれないですが(笑)。はじめてのことなので、今後どんな執筆の仕方がいいのか、走りながら考えていくつもりです。

 ただ、私は幼少期に空想癖のある子どもだったらしく、その部分は大人になった今も変わっていないと思います。家でひとりで執筆することが多いので、現実と小説の境界があいまいというか、「よし!」と気合いを入れることなく書いている気がします。

――セカンドキャリアとしての専業作家をこの先もずっと続けていきたいですか。

秋谷 もちろんです! 仮に商業の世界でなくとも、何かしらの形で文章は書き続けると思います。でも、私は看護師の仕事も大好きなんですよ。もともと、休養して回復したら看護師に戻ろうと思っていたんです。まさかこんなすぐに作家になれるとは思わなかったので……。

――では、サードキャリアは、看護師兼作家、でしょうか?

秋谷 いえ……。少なくともフルタイムで働きながら書くのは無理ですね。現役の医師、看護師としてフルで働きながら執筆されている作家さんもいらっしゃいますが、到底真似できません。でも、憧れはあるんですよ! 現場にいないと分からないことって本当に多いので。うーん、パート勤務なら、ありえなくはないかもしれない……。とはいえ、健康第一なのは間違いないですね。人生を振り返ると、「休養期間があったから作家になれた」と捉えることもできますが、私はそうは思っていないんです。もちろん作家デビューできたことは嬉しいけれど、体を壊さないに越したことはない。健やかに書き続けられるように、自分の体と相談しながら、サードキャリアは考えます!

ナースの卯月に視えるもの (文春文庫 あ 99-1)

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文藝春秋

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