パブで働くこうした人々が独立して自分の店が持てるような家賃や条件面の優遇策ができないだろうか。そしてホテル側との連携も強めてはどうだろう。すでにホテル側では、客を施設内に囲い込むのはやめて、「外へ楽しみに出かけること」を客に勧めるムードもできている。
山下氏によれば、大きな理由は「人手が足りないから」。従業員不足に悩む旅館と、至近のパブが連携した料金プランや、コースを設定できないだろうか。「湯けむり通り」は一本道である。直線的にお店を飲み歩くスタンプラリーなどもやりやすい。
長期的な賑わいを生んでいくには?
一時的に客寄せイベントを打っても、長期的な賑わいというのは生まれにくいものだ。「何かを持ってくるのではなく、障壁を減らす」策が重要に思える。芸者置屋もいまだ数十軒が健在だ。芸者衆との外への飲み歩きプランを設定してみるのも面白い。女性客の利用も見込めるかもしれない。まずは旅館、芸者、置屋、三者の話し合いが必要になってくると思うが。
一方的に奪う構造がないのであれば、夜の歓楽は一方的に否定される悪しきものではない。「あの一角は、なんだかにぎわっている」という界隈が通りに生まれ、地域に認知され出せば、きっと若い人々もバーをやってみたい、レストランをやってみたい、と続いていく。
通りを何度も行き来しつつ、何軒目のハシゴ酒かもわからなくなりつつも、ほどよい値段で安全に飲ませてくれた温泉街のシャッターが、ふたたびあがっていくことを私は願った。
(※3)「週刊現代」昭和49年2月14日号
(※4)「週刊新潮」昭和59年10月4日号