ただ、かつて建物があったところがところどころ取り壊され空き地になっていたり、数軒ずつ飲み屋を並べた長屋状の建物のいくつもが、シャッターがおりてもいる。
このあたりをテコ入れするのは難しいのだろうか。……とまずは思ったのだが、地元も手をこまねいていたわけではなかったのがすぐに分かった。笛吹市は歓楽街にだいぶ理解のある自治体といっていい。コロナ禍中には、「お座敷プラス」なる名称で、芸者置屋に補助金を出したこともあるくらいなのである。
空き店舗を借りようとする人に補助金を出す施策を行ったが…
市はあらたに独自事業として、空き店舗を借りようとする人に補助金を出すことに決めた。この施策、「ランチを提供すること」を大きな条件としている。しかし、山下氏はため息をついていた。
「市だけではなく、家主さんや銀行も協力して取り組んだんですが……結局、そこまでは入ってこなかったんです」
それでも令和5年度は5軒、令和6年度は3軒ほどが新規オープンに漕ぎつけている。空き店舗はほとんど放置されたままの地域も多い中、健闘していると私は思う。飲み歩くうち、さらなる光明もあるように感じた――。
元気があるのは外国人スタッフによるパブ
「湯けむり通り」は、居酒屋やレストランはさほど多くないもののパブ・スナックがいまだ相当数ある。「70~80軒はまだスナックがある」と山下氏も言う。
なかでも元気があるのは外国人スタッフによるパブ。タイ人、フィリピン人を中心に一部南米系の方が働く店もある。昭和期とは違い、在留資格もむろん問題ない。年齢層は40代以降の方が多く、キャバクラなど日本人による社交飲食店と比すと高めだが、その分、客を盛り上げる勘所を押さえている。値段も手頃だ。旅館の浴衣を着て中国語のカラオケを歌う香港や台湾からの観光客を外国人スタッフがもてなす、そういうある種不思議な光景も珍しくなくなってきた。