選曲の基準は、「私が歌いたい詞なのかどうか」
――矢野さんは民生さんの曲だけでなく、いろいろな方の曲をカバーしていますが、選曲する際の基準はどんなところにあるんですか?
矢野 いちばん大きな部分は、やはり私が歌いたい詞なのかどうかということ。私がまず歌えるかどうか。歌えるというのは、つまりその中に私が普段の日常生活では絶対に口に出さないような言葉が入っていないかどうか。そしてなによりも、その中で書かれている気持ちに、私もそう思うというふうに共感できるかどうか。なおかつ共感するだけでなく、それを私が表現したいと思うかどうか、だと思いますね。
矢野さんのカバーは、根幹をより強調した曲になる
――矢野さんがカバーをすると、どんな人の曲でも矢野さんのオリジナル曲のように再構築されてしまいます。でも曲の根幹にあるものは、まったく変わりません。
矢野 それは私が根幹の部分を表現したいと思っているからです。例えば原曲がロックンロールだったり、まったく違うかたちであっても、その根幹の部分をつかまえたと思ったら、今度は自分がそれを作り上げていくっていうか。だから結局は、まったく違う建物になってしまうことが多いですけれど(笑)。でももしかしたら、原曲がそこで表現したかったもの、あるいはその根源にあるものを、より強調した曲になっているかもしれませんね。
――今年9月に行われた民生さんとの対バンライブでは、「すばらしい日々」や「大迷惑」に加えて、民生さんのアルバム『股旅』(1998)から「海猫」、それにアルバム『FAILBOX』(1997)から「野ばら」などをカバーされていました。
矢野 私が彼の曲の中で歌いたいと思うものは、きっと奥田さんは「なんでこんな曲がいいんだろう?」みたいに思うことがあるかもしれないですけれど(笑)。「なんでこの曲を選んだの?」みたいな。でも一緒に歌ってくださると、矢野と奥田でなければ表現できないものが必ずそこに生まれるので。「大迷惑」はとても得意な曲で、あれは原曲の勢いをそのままやるわけですが、でも矢野と奥田が歌う「大迷惑」は、たぶんどこかユニコーンとは違うところがあると思いますね。
撮影=三浦憲治
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