虐待や無国籍、経済的な困窮…問題を抱えている人は周りにたくさんいる

――支援活動を行う中で、虐待の問題や児童養護施設の抱える問題などについて、どのような課題を感じていますか。

ブローハン 今まで、自分がどれだけ社会の問題に無関心だったのか、ということに気付きましたね。そういう人たちってまだまだ多いと思っていて。例えば自分の半径8メートルの世界にはたくさんの困っている人たちがいるのに、それを見ずに「紛争地域の子たちの助けになりたい」とか、半径8メートルより先の人たちのことばかり助けようとしていたんだな、と。

 周りの人たちと話せば話すほど、虐待や無国籍の問題を抱える人たちがいたり、経済的に困窮しているシングルマザーがいたりするんですけど、身近な人たちの助けにすらなれていないのに、より遠くの問題にばかり目がいってしまう。それっておそらく「知らない」から起こることであって、それ自体が社会の課題なんだなと思います。

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児童養護施設出身者としてメディアで発信している

――そもそも社会にはどんな問題があって、そこにはどんな事情があるのかを知らなければ解決には向かわないということですね。

ブローハン そうですね。例えば虐待死のニュースひとつを見ても、親や児童相談所を叩いて終わるのではなく「なぜそうなったのか」に目を向けて、知って理解し、根本的な問題を取り除いていかないと、また次の被害者を生んでしまうと思っています。

今置かれている環境だけがすべてじゃないと知ってほしい

――最後に、虐待に悩む子どもや子育てに悩んでいる親など、現在進行形で家族の問題を抱えている人にメッセージをいただけませんか。

ブローハン 今置かれている環境だけがすべてじゃない、ということは知っていてほしいです。ここにしか住めない、ということは決してなくて、今いる最悪の場所から逃げ出す選択肢があることを信じてほしいなと。

 親御さんに関しては、子育てを決して孤立した状態で行わず、助けを求めてほしいと思います。周りにいる全員が「敵」ではなくて、自分が思っているよりも「助けになりたい」と思う人たちが多いことは、もっと知られてもいいんじゃないかと。

 もしパートナーが子育てや家族に向き合わないとしても、今は親を支援する仕組みやサービスが増えているので、とにかくSOSを出して、行政サービスなどにも頼るようにしてほしいですね。1人で子育てするって、やっぱり限界があると思います。だからこそ、あなたを「助けたい」と思っている人が近くにいるというのは、信じてほしいなと。

 

撮影=山元茂樹/文藝春秋

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