文春オンライン

なぜ読売新聞は、麻生節を「麻生節」と表記し始めたのか?

もうとまらない失言を、新聞はどう報じているか?

2018/05/25

 クイズです。「政府がよく使う言葉」ってなんだかわかりますか?

 答えはこちら。

「『異次元』で『問題ない』 与党の理屈」(日刊スポーツ「政界地獄耳」5月15日)

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《「異次元」の次にこの政府が多用する言葉に「問題ない」がある。周辺が問題といっても、当事者が問題ないと言っているので問題ないという理屈だ。これでは法治国家が成り立たない。》

セクハラは「問題ない」のか?

 ああ、そういえば「問題ない」ってよく言ってる。まるで「そのまま押し通すおじさん」である。すると次の一報がきた。

《政府は18日、「現行法令において『セクハラ罪』という罪は存在しない」との答弁書を閣議決定した。》(毎日新聞5月19日)

麻生副総理 ©杉山拓也/文藝春秋

 はるな愛なら「言うよねー」だろうか。

 いや、確かにセクハラ罪はない。でもそういう開き直りみたいな態度が問われているのに。この「『セクハラ罪ない』閣議決定」という返し方もまさしく「そのまま押し通すおじさん」である。

 閣議決定は「麻生氏の主張に沿ったものだ」(読売新聞5月19日)が、その麻生氏発言が最近あらためて目立つ。

お互い発言注意」記事のすぐ隣で……

 思わず、この流れすごい! と目を奪われた紙面を紹介しよう。5月17日の産経新聞である。

「『お互い発言注意』首相と麻生氏 立ち話で申し合わせ」

首相と麻生副総理 ©石川啓次/文藝春秋

 首相と麻生氏が発言に注意しようとわざわざ声かけをしたという。理由は、

《麻生氏は14日の衆院予算委員会で、質問中の国民民主党の玉木雄一郎共同代表に「自分がしゃべりたいんだよ、この人は」とやじを飛ばし、野党が反発していた。》(産経 同)からだ。

玉木雄一郎共同代表 ©杉山拓也/文藝春秋

 しかし「お互い発言注意」の隣の記事を見ると、

「その麻生氏、北専用機に『途中で落ちたら話にならん』」

《あの見てくれの悪い(北朝鮮の)飛行機が無事シンガポールまで飛んでいってくれることを期待するが、途中で落ちたら話にならん》

 すごい。「返す刀で」という表現があるがまさにそれ。この産経紙面は躍動感があった。瞬時にダブルプレーが成立した感じ。