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日本人9人を全員殺害
後の生存者の証言では、こんな会話があったという。このとき、現場に来ていた福田村村長らが「日本人ではないか」と言っても群衆は聞く耳を持たず、行商団のメンバーに君が代を歌うことを強要する。そこで、駐在所の巡査が本署に問い合わせに向かったのだが、その直後、自警団は一行に襲いかかる。
乳飲み子を抱いて命乞いをする母親は竹やりで全身を突かれ、男は鳶口で頭をかち割られ、泳いで逃げようとした者は小船で追われて日本刀で膾切りにされた。惨劇はしばらく続き、雑貨屋の前にいた9人全員を殺害。1人は妊婦だったという。
一方、鳥居のそばで茫然と事態を見つめるしかなかった6人は、針金や縄で後ろ手に縛られ、川べりに引き立てられた。乳児を抱いたまま縛られた母親を後ろから蹴り上げながら、1人の男が「早く投げ込んじまえ!」と叫ぶ。
呼応した自警団の面々が縛りあげられたままの6人を川に投げ込もうとしたとき、馬で駆けつけた野田署の警官が事態を止めた。河原には女子供を含む9つの惨殺死体が転がり、厳しい残暑の日差しに照らされていたそうだ。