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「世界観が出ている」「表現力が素晴らしい」…本質は何も語っていない

町田 例えばフィギュアでは、「美しい演技」「きれいなジャンプ」のような言葉で評することがよくありますよね。そう感じたから、そう言葉にしたのだろうとは思うのですが、私が気になるのは、じゃあそれは何故に美しく、何故にきれいなのか、ということです。その「美しい」「きれい」と思わせている現象の本質というものをきちんと掴まえないまま、ただ紋切り型の賞賛の言葉が濫用されているように感じてしまうのです。これは、観客の問題である以上に、評価を生業としている人間の問題でしょう。

2014年ソチ五輪での町田さん ©JMPA

スポーツの世界に「空虚な言葉」が蔓延している

 その演技がなぜ美しいのか、なぜきれいなのか、その「理由」を解きほぐすことこそが解説者の本来の仕事なのですから。「美しい」「きれい」ということ自体は本当なので、深掘りせずに流してしまうことができる。でも、その結果として、美しさの本質がどんどん分からなくなってきているように感じます。似た話として、フィギュアの解説で頻出する「●●選手/●●の音楽の世界観が出てますね」「表現力が素晴らしいですね」というような言い回しもあります。これもまた、本質は何も語っていません。

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「じゃあ、その世界観とは何?」「表現力って?」と聞かれた時、その解説者はおそらく、具体的なことは何も答えられないのではないでしょうか。こうした実体のない「空虚な言葉」が蔓延しているのが、スポーツの世界なのです。