「同盟関係を強化し、黄金時代をつくりたい」安倍からの提案
安倍はトランプに提案した。
「トランプ次期大統領と同盟関係を強化し、黄金時代をつくりたいと考えています。かつて、米国のレーガン大統領、日本の中曽根首相、英国のサッチャー首相という三巨頭が力を合わせ、冷戦期に旧ソ連に打ち勝ったことがあります」
1980年代、企業と市場の力を最大限活用し、成長とイノベーションを促進する新自由主義の旗印を掲げ、同時に、欧米と日本の西側が「安全保障の一体化」を図り、東側との体制間競争に打ち勝った日米欧の戦略連携を、自分がトランプと手を携えて追求していきたいとの夢である。
その際、今回は、対象とする相手はソ連ではなく中国である。
「米国に挑戦している中国に対して、平和的台頭を促していきたい。米国と力を合わせてそうしたいものです」
安倍の説く日米欧の対中連携の重要性に、トランプは反応しなかった。
憲法解釈の変更により、いざというとき米国を助けることができる
トランプはそれまで米国の同盟国は“ただ乗り”していると攻撃していた。かつてはトランプの矛先はどこよりも日本に向けられていた。大統領になってからも日本に対してただ乗り攻撃をやられたら同盟が揺らぐ。
安倍政権になってからの日本の防衛努力と同盟の重要性をトランプに説明しておく必要がある。
「日米同盟が基軸です。それをもっと強くしたい。これまでの日本の憲法解釈では日本を守るために公海上で活動している米軍の艦船に対して攻撃が行われた場合、日本は助けることができませんでした。しかし、私の政権は憲法解釈を変更し、集団的自衛権を限定的ではあるが行使できるようにしました。同盟は互いに助け合うことで維持できる、それができない同盟は維持できない」
日本は、いざというとき、米国を助けることができるし、そのつもりである。日米同盟は、ようやく本格的な同盟となったのだ、安心してほしい、と安倍は誇らしげに告げた。
「それを可能にした法律の制定に対して、強い反対が国内ではありました。国民の6割までが反対しました。首相官邸は、連日、反対のデモに取り囲まれました。しかし、これらの法律が成立してから1年以上が経ちますが、いまでは国民の半数以上がこの法律を維持するべきだと回答しています」