そんなふうに無駄はできるだけ排除しようと、仕事も取捨選択しながらも、実際のところは若いころよりいまのほうが忙しいという。たしかにソロだけでなく、再結成したユニコーンのほか、寺岡呼人ら親しいミュージシャンたちと結成したカーリングシトーンズなどバンドも掛け持ちしていると、時間がいくらあっても足りないだろう。
いい曲を作ろうという気合いは「もうないです(笑)」
『59-60』では《だから40代になってからは1つの仕事にそんなに時間をかけないように、その都度「ひらめき」で仕事をするようになっている》と明かしている。曲をつくるときも入念に準備するのはやめ、「大喜利」のように頭を使っているのだとか。2021年、ユニコーンのメンバーとして応えたインタビューでは、こんなふうに語っていた。
《急に「はい!」って言われて、あたふたしながら作る、みたいなもののおもしろさが、若い頃じゃできなかったし。シトーンズでも、完全に大喜利で、そこで無理矢理ひねり出して、『なんか変なのできたな』と思っても、3回も聴いたら『うん、曲だな』みたいなね。犬にどんな変な名前を付けても、1日経ったら、それはもう名前なのよ》(『ロッキング・オン・ジャパン』2021年10月号)
名曲をつくってやるという野心もいまやまったくないようだ。やはり2021年のある雑誌のビートルズ特集では、「曲を作るとき、『ビートルズ超えるようないい曲作るぞ』とか気合いを入れて作るのですか?」と訊かれ、《それはもう三〇代くらいで終わりました。ソロになったくらいの頃ですかね、やっぱこうちゃんといい曲が作れるように当然なりたいと思ったし、それを残しておきたいと思う心がありました。そういう気合いはありました。もうないです(笑)》と冗談めかして答えていた(『kotoba』2021年6月号)。
もっとも、そう言ってるそばから案外、名曲が生まれてしまったりしそうではある。だからこそ、奥田民生は油断ならない。
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