海外展開を意識した“ジェンダー配慮”に生みの親が苦言
海外展開をするうえで、HD-2D版『ドラクエ3』はジェンダーに対する配慮を行っている。
本作では最初に勇者の設定を行うのだが、性別を決めるのではなく、「ルックスA」、「ルックスB」と見た目を決めるような文言に変更された。そして、これに対して一部のユーザーから反発が起こっている。
性別ではなく見た目を選ぶというのは、昨今のゲーム業界ではスタンダードなものである。これによって男女に限らない性別の人も違和感なく選べるようになるのだが、古いゲームゆえにその姿勢を受け入れない人もいたわけだ。
また、性的な表現の変更もあった。本作ではルックスB(過去作では女性)の戦士がビキニアーマーを装着しているのだが、HD-2D版になるにあたりインナーが追加されており露出が控えめになっている。これは単純にビジュアルの調整がいまいちで、配慮のための強引な修正に見えてしまったのもよくなかった。
いずれにせよ、リメイクにおいて「原作と違う」ことはそれだけで反発を呼びうるのである。日本にRPGを広めた「ドラクエ」シリーズは保守的なJRPGになっており、なおさらセンシティブな問題になっていく。
何より、「日本の国民的RPG」が「世界向けのRPG」に修正されるとなると、ゲームのアイデンティティすら揺らぐと不安に感じる人もいるだろう。あくまで国内の絶対的な存在でいてほしい、という気持ちも理解できなくもない。それだけならまだしも、「ドラクエ」の熱狂的ファンであれば自身のアイデンティティにも繋がりうる。
しかし、前述のようにいまやゲームは世界に売るべき状況になっているわけだ。スクウェア・エニックスとしては変更を通さざるを得ないだろう。
一方、「ドラクエ」シリーズ生みの親である堀井雄二氏は、ジェンダー配慮に対して苦言を呈している。
「男女にしていったい誰が文句を言うんだろう。分からない」
世界向けのJRPGになりたいのかどうか、うまく足踏みが揃っていないような状況といえる。