国産のRPG体験も変化。当然ながら「ドラクエ」も変わらざるを得ない
ゲーム内容の変化も注目すべきだろう。前述のようにRPG自体もかなり変化しており、古典的なRPGはややニッチなジャンルといえる。
国内開発のライバルも方向性を変えている。たとえば、同じスクウェア・エニックスの『ファイナルファンタジーXVI』はアクションRPGに舵を切っているし、“大人向けのストーリー”を自称している。
任天堂は2024年11月に『マリオ&ルイージRPG ブラザーシップ!』を発売しているが、これは古典的なRPGの部類といえる。とはいえ、コマンド選択式のバトルでもアクション要素を入れていたり、メインクエストとサブクエストで物語進行を区切ったりと、現代風の装いは身につけている。何より物語のテーマが「繋がりと分断」であり、明らかにSNS時代を意識している。
では、HD-2D版『ドラクエ3』はどうなのか? こちらもゲーム内に手を加えており、ゲームバランスを緩和しつつ、育成と収集を楽しむ方向に舵を切っている。
オートセーブや地図が追加されたので難易度はかなり低下しているうえ、周囲を探索すれば装備や道具が手に入る。また、町中やダンジョンにいる「はぐれモンスター」を見つけて仲間にするといった収集・育成の要素が増えているわけだ。
ザコ敵が2回行動をしたりとゲームバランスの調整もされているものの、新職業である「まもの使い」がかなり強いうえ仲間も全般的にインフレ気味なので、かなりプレイヤー有利になったといえる。
このような調整は「保守的でありながらも現代的なRPGの遊び」と評することができるのだが、難易度が高い昔の冒険を求めていた人からは不満が出る可能性も十分にある。前述のように、ゲームのアイデンティティにも繋がる話だ。
たとえば、ファミリーコンピュータ版『ドラゴンクエストII 悪霊の神々』は終盤のゲームバランスが取れておらず、ラストダンジョン前のザコが恐ろしく強かった。しかし、その難しさこそが思い出になっているのだと主張する人もいるわけだ。