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1年3カ月に及ぶ「要介護4」の父の自宅介護

父の場合、介護施設に入るという手もあったのだが、本人が拒絶した。当時、周囲の人に「父は思考能力はしっかりしている」と話すと「よかったね」と言われることが多かったのだが、それはそれで厄介だった。

半身不随になった父は一人では何もできないのに口だけは達者で、そのうえ頑固。文句は一流だったのだから。

その時点で父は「要介護4」に認定されていたのだが、「要介護3」が食事や入浴、トイレの際に介護士やヘルパー、あるいは家族の手を借りなければいけないというレベル(現在の私が要介護3)だ。

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これが「要介護4」になると、家族が自宅で介護するのは不可能だというレベルなのだ。しかし妻は父が自宅介護を望むのならと腹をくくってくれた。

この時期に妻にかけた多大な労力と精神的な負担に関しては、本書のあとの章に譲るとして、父の自宅介護は1年3カ月に及んだ。

ある時、父に横行結腸がんが見つかり手術したのだが、術後の経過が芳しくなかったことから、介護保険適用の老人保健施設に入所することになった。

計画性がないと相続税負担はどんどん増えていく

介護施設に入所してからの費用は、父も納得のうえで本人の口座から引き落とすことになった。

当時、私が把握していた父の預金口座は、引き落としに使っていた一つだけだったが、当然のごとくその口座に入っていたお金はひと月ごとに減っていき、やがて底をついた。

父に「他に預金はないの?」と尋ねたところ、「あるよ」という返事だったので、「幾らあるの?」と訊くと、「たくさんある」と言う。

ところが「その通帳はどこにあるの?」という私の問いかけに対しては、「それは分からない」と答える。何度質問しても同じ答えだ。

そこで単刀直入に「施設の費用の支払い期限が迫っている。このままだと支払いが焦げついちゃうよ」と伝えたところ、「卓郎、お前はいっぱい稼いでるんだから、とりあえずお前が払っておけ」と言い出した。