相続税対策で気をつけるべきことは何か。経済ジャーナリストの森永卓郎さんは「我が家は母の死後、父との共同生活でおそらく数千万円ほどの費用を負担したが、父にかかる費用は父に払わせるべきだった。そうすれば父の資産は減り、おそらく相続税を払わずに済んだはずだ」という――。

※本稿は、森永卓郎『身辺整理 死ぬまでにやること』(興陽館)の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/takasuu ※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

要介護の末に逝った父、ピンピンコロリで逝った母

私は昨年末に投与した抗がん剤が体にあわず、死の淵をさまよった。一命をとりとめ、体調もある程度回復した段階で思い浮かんだのは「資産整理をしなければいけない」ということだった。

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資産整理については余命宣告を受ければもちろんのこと、年を重ねていく中で多くの人がたどりつく終活だと思うが、私がことさらに急がなくてはいけないと考えたのには事情があった。

亡き父の資産整理を経験していたからだ。

死後の資産整理がどれほど大変な作業であるかは、やったことのある人でなければわからないだろう。

ここではまず、私が体験した相続地獄の全貌を伝えることから始めたい。

父は2006年に脳出血で倒れて半身不随になった。

その後、自宅介護を経て施設に入所し、2年後の2011年に84歳で他界した。相続の手続きをしながら私は「この地獄のような日々は、あの時すでに始まっていたのだ」と思い起こしていた。

あの時とは2000年に母が他界した時のことだ。

母はピンピンコロリで旅立った。

3日前に両親がそろって私の自宅を訪ねてきて、みんなで一緒に食事をしたばかりだった。

だから父から母が総合病院へ運ばれたと連絡を受けた時は耳を疑ったが、私が職場から急いで駆けつけた時、母の息はすでになかった。

「自分もいつ死ぬかわからない」と危機感を抱く

医師が下した死因は「糖尿病薬による低血糖に伴う心不全」。母は糖尿病を患っていて、血糖値を下げるための薬を服用していた。

父の話によると、私の家を訪ねてきた翌日に親戚の法事に出席した際、風邪で体調を崩し、食欲がないと言い出した。