“着物警察”は、着物を廃れさせたいのか? 愛しているのか?
――前回、“着物警察”の話も出ましたけど、他人の着物の着方ってそんなに気になるものですか。
長谷川 私は着物・洋服問わず好きにしろというか、人の着るものにとやかく言うな、というのが基本スタンスですね。
あと、着物だってちゃんと着なくてもいいじゃない、と思ってて。TPOなんて大人なら誰だってわかってることで、それは洋服も着物も一緒。つまりその程度のことだと思うんですけど、だからこそ、着物警察の人って本当に何がしたいのかなって。着物を廃れさせたいのか愛しているのか、私には分からないです。
――着物の着方でそこまで見解がわかれるのも、素人からするとよくわからなかったり。
長谷川 着付け教室って、着物を売りたいがために教えているところも多いんですね。「帯付き」と言うんですけど、羽織ものを着ないで歩いたら駄目、と指導する着付け教室もあって。
そうすると、着付け教室で教わったことがすべてになっている人なんかは、「私はそう教わったのに、あの人は守ってない!」みたいなことになっていくのかなと。
汁が飛びそうなものは、ちょっとひるむ
――今日の長谷川さんのお着物、本当に素敵ですけど、「この後、焼き鳥屋に飲みに行こう」と誘われると「それはちょっと……」となることもありますか。
長谷川 それはありますね。「焼肉は今日は勘弁」とか。やっぱりにおいが強かったり汁が飛びそうなものは、ちょっとひるみます。
――お腹が空いた時、パッと入れないお店もある?
長谷川 うどん、パスタは飛びやすいんで、避けたりします。でも、結局は自分次第じゃないかな。汁が飛びそうにないお店に入っても飛ばしたりするから、お手入れ代も覚悟の上で着てます。
だから、そういう意味で敷居が高いのは分かるんです。着方もお手入れの仕方もわからないですし、いくらかかるのかも検討がつかないですし。
――洋服より着物は高くつく?
長谷川 お洋服も、ファストファッションからブランド物まで幅広いですよね。着物も、その中で楽しめる感じです。
着物を着る方も、「お洋服と同じぐらいの価格帯で買いたい」という方が一番多いと思うんですね。だから、普段ワンピースを1枚1万円で買っているのか、5万円まで出せるのかと同じように、着物も予算に合わせて買う店さえ選べば、どの層もいけます。だから私も無理はしないし、逆にすごく安いものも買わないですね。
――では、差が出るのはお手入れの方ですか。
長谷川 お洋服と同じぐらいの値段で買うことはできるけど、家では洗えないから、お手入れという点では高価になります。基本的に正絹の着物のお手入れはプロに任せます。
今日着ているような冬の着物は、シミとか汚れがなければこのまま吊るして、汗や湿気が取れたら畳んでたとう紙に入れてしまって……というのを2~3年繰り返してから洗いに出すんです。だから、プロに任せると、頻繁にお手入れしなくて済むんですよ。