定時制高校に通うさまざまな事情を抱えた生徒たち。負のスパイラルから抜け出せない岳人(小林虎之介)。子供時代に学校に通えなかったアンジェラ(ガウ)。起立性調節障害を抱える佳純(伊東蒼)。中学を出てすぐに東京で集団就職した長嶺(イッセー尾形)。年齢もバックグラウンドも異なる彼らは、謎めいた理科教師の藤竹(窪田正孝)のもと、夜の教室に「火星のクレーター」を再現する実験で学会発表を目指す。しかし、自身が抱える障害、家庭内の問題、断ち切れない人間関係など多くの困難が立ちはだかり……。
伊与原新さんの青春科学小説を原作とした、ドラマ10『宙わたる教室』(NHK総合 毎週火曜夜22:00ほか)は、各方面から評判を集めているこの秋の話題作だ。終盤にむけてますます盛り上がりをみせる本作について、原作者の伊与原さん、脚本家の澤井香織さん、監督の吉川久岳さんにじっくりと話を聞いた。
(全2回の前編/後編は12月4日公開予定)
原作者が「ここだけは譲れなかった」ポイントとは?
伊与原 自分の小説が映像化されるのは初めてで、澤井さんの脚本を読んだときからすでに感動していたんですが、第1話冒頭のJAXAのカットからすでにぐっときて、涙が出そうになりました。オープニングの映像もすごくいいですよね。
吉川 もともとの原作本の装丁イメージもあり、ちょっと温かみのあるといいますか、デジタル感が全面に出過ぎず、むしろ手作りを感じさせるもの、夜の教室から宇宙へという、小さな場所から一気に世界が広がるイメージを、タイトルバックディレクターの清水貴栄さんに伝えて制作いただきました。
伊与原 いろんな意味が込められていますよね。エンディングのアニメーションに描かれている、滑車や雲のように見えるものの意味も、それぞれ全部をすごく解説したくなります(笑)。
吉川 定時制高校の科学部の話で、しかも実話から着想を得たという、『宙わたる教室』の原作の存在は新聞広告で知って、発売直後に面白そうだとすぐ手に取りました。小説を読んだ段階で岳人もそうですし、志望校の受験に失敗した全日制の生徒・要(南出凌嘉)のエピソードなんかもすごくいい。僕の子供もちょうど受験をしていたところで、それと重ね合わせて何度も泣かされましたし、とにかくクライマックスの場面には感動しました。