実験が成功するかどうかは保証できません――
吉川 今回は、丁寧にキャラクターを作っていこうということで、第1話から第4話までは、基本的にその話ごとに撮影をしました。スケジュール的には大変なんだけれど、やっぱりそれぞれのキャラクターがちゃんと確立していく手ごたえもありました。
伊与原 僕が撮影現場に伺ったときは、ちょうど第5話の撮影中で、神林CPが「役者の皆さんも距離感が科学部らしくなってきたところです」とおっしゃったんですけど、順番に撮っていただいたことに大切な意味があったんですね。実験シーンの撮影も、ずいぶん苦労されたと聞きました。
吉川 そうですね(笑)。その現象自体は起こるんだけど、映像的なカタルシスが演出する側としてはほしい。第2話(「雲と火山のレシピ」)のお酢を使った噴火実験では、勢いよく噴き上がる映像がほしいし、岳人ひとりでは失敗するんだけど、アンジェラが加わってこそ成功するというところを撮りたい。火星の夕焼けを作る場面もそうですが、成分の分量を調整しながら、いろんなトライアンドエラーを繰り返しながら進めていった感じですね。
僕自身も何か「そうなんだ!」っていう発見が日々あってすごく楽しい……いや、ちょっと揉めることもありましたけど(笑)。案外、いちばん簡単だと思っていた、味噌汁を使った熱対流の実験がすごく難しくて、対流はしてくれるんだけど、絵として作りたい積乱雲がなかなか作れない。どうすればいいのか煮詰まって、あのときが撮影最大の危機だったかもしれません。
伊与原 僕は最初に言ったんですよ。「僕自身はやっていないので(実験が成功するかどうかは)保証できません。ただ文献によればできるはずです」って(笑)。ただ、実際に科学とはそういうものです。いろいろやっていただいて、苦労して苦労してようやく出来たという達成感が、ドラマにも反映されている気がします。
吉川 そうですね。まさに撮影前のスタッフルームは科学部のようになっていました。相当苦労したというのは、たぶん演者さんたちにも伝わって、成功したときにはみんな「オオーッ」って盛り上って(笑)。素に近い感じで喜んでいるようでした。
伊与原 第4話(「金の卵の衝突実験」)では、イッセー尾形さん演じる70代の長嶺のお芝居に圧倒されたんですが……。