伊与原新さんの青春科学小説を原作とした、ドラマ10『宙わたる教室』(NHK総合 毎週火曜夜22:00ほか)は、いよいよ第10話「消えない星」で最終回を迎える。ドラマの舞台となった定時制高校科学部の「部員のような気持ちで」本作と向き合い続けてきた、原作者の伊与原さん、脚本家の澤井香織さん、監督の吉川久岳さんが、改めて作品に込めた思いや最終回のみどころを語った。

(全2回の後編/前編はこちらから)

左からNHKドラマ10『宙わたる教室』の脚本家の澤井香織さん、原作者の伊与原新さん、監督の吉川久岳さん

はるかに予想を超えてきたひとりひとりの登場人物

伊与原 僕は演劇というものに触れてこなかったので、脚本というのを今回初めてじっくり読んだんです。実際にドラマを観ていると、僕が想像したものとはまったく……セリフだけ読んでいたものが映像になってくると、キャラクターが生きて立ち上がってくる度合いが、僕の予想をはるかに超えていました。きっと澤井さんは演者さんのセリフの間とか、表情とか動きも含めて、完全に頭の中で再現しながら、脚本を書いているにちがいない。そうでなければこういうことになるはずはない、と思いながらいつも観ていたんですが、そんな感じでしょうか?

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澤井 一応あるにはあるんですけど、そこに監督の解釈も入ったり、役者さんの解釈も入って、また違うものになるので、それが映像のすごく面白いところですね。脚本は全体の土台のようなものをお渡しする感じかなと思います。

伊与原 そうなんですか!? 完全にすべてイメージできているとしか思えませんでした。

澤井 スタッフや演者の方に、登場人物たちの気持ちの流れや動きなどが、なるべくイメージしやすいように書けたらとは考えています。

伊与原 小説のように地の文がないのに、脚本では感情を説明しなければならないなんて、超難しいでしょう(笑)。小説家とは全然違うすごさですね。

澤井 映像が自分が書いた通りになるかどうかは、普段からあんまり気にしないんですけれど、やっぱり今回は楽しかったというか、もう絵(映像)になった時点で、はるかに私の予想を超えていました。毎回の皆さんの演技は、その人を生きているようで。それが本当にすごいと感じました。

第9話「恐竜少年の仮説」より。窪田正孝さん演じる理科教師の藤竹と小林虎之介さん演じる不良生徒の岳人 ©NHK