それぞれに事情を抱えた定時制高校の生徒たちが、ある教師と出会い、「科学部」を結成。夜の教室に小さな奇跡を起こす――実話に着想を得て生まれた、伊与原新さんの小説『宙(そら)わたる教室』(文藝春秋刊)がドラマ化された。
教師の藤竹を演じるのは窪田正孝さん。藤竹が最初に科学部に誘う生徒・柳田岳人(たけと)を、ドラマ「下剋上球児」などへの出演で注目を集める小林虎之介さんが演じている。
舞台は東京・新宿にある定時制高校。中学から不登校になった岳人は、やがて不良に。20歳で定時制高校に通い始めたものの、勉強についていけず授業も休みがちに……。小林さんは、そんな岳人を演じるにあたって役作りのため歌舞伎町へ足を運んだという。
「岳人のまとっている雰囲気みたいなものを掴みたくて、クランクインの前に、夜の歌舞伎町に行ってみたんです。そういうのを知っているのと知らないのとでは演技もまた変わってくるんじゃないかと思って。街を観察しながら自転車でゆっくり回っていたら、怪しく見えたのか、職質を受けてしまいました(笑)」
読み書きが苦手なことを馬鹿にされてきた岳人。先日放送された第1話では、そんな岳人の様子を見て藤竹があることを指摘。岳人が感情を爆発させるシーンもあった。
「今回は第1話から順番に撮影していくスタイルだったので、第1話の時点では、窪田さんとは最低限のコミュニケーションだけで、あまり喋らないようにしていました。岳人は、勉強が上手くいかないことや、それを馬鹿にされることに対する苛立ちを抱えているんですけど、一方で、諦めぐせもついてしまっている。それをどうやって乗り越えていくのか、自分から積極的になっていく姿が、ドラマを観てくださる方に届くといいなと思っています」
藤竹の誘いで、科学部のメンバーも1人ずつ増えていく。フィリピン人の母と日本人の父を持つ越川アンジェラ(ガウ)。起立性調節障害を抱え、保健室登校を続ける名取佳純(伊東蒼)。青年時代、高校に通えず働くしかなかった長嶺省造(イッセー尾形)。年齢もバックグラウンドもバラバラだ。
「同世代ばかりが集まっている現場とはまた違って楽しいですね。ドラマの中では部員同士、衝突することもありますが、現場はほのぼのとしています。イッセーさんは、もともと宇宙のことや実験にも詳しくて。先に岳人が実験するシーンを撮影したのですが、イッセーさんが『どんな撮影したのか教えてよ』と聞いてくださったので、僕が説明していたら、その様子を見たスタッフさんが『本当の科学部みたいだ』って言ってました」
科学部が挑むのは「火星のクレーター」を再現する実験だ。教室に実験装置を手作りするが、実験シーンの撮影は大変だったそう。
「実験装置を動かしながら専門的な台詞を言わなければならないので、難しかったですね。専門用語を単にワードとして覚えただけでは台詞としてうまく喋れないと思ったので、実験内容を理解しながら台詞を覚えるようにしました」
顧問として科学部を導く藤竹だが、その目的は不明で、彼自身どこか謎めいている。
「藤竹を演じている時はミステリアスですが、現場での窪田さんはすごく明るい方なんです。役者の先輩としていろんなことを教えてくださいますし、一緒にお芝居をしながら僕も勉強させてもらっています」
こばやしとらのすけ/1998年生まれ。岡山県出身。2021年俳優デビュー。2023年にはドラマ「下剋上球児」で野球部員の日沖壮磨を演じ一躍注目を浴びる。その他主な出演作に、ドラマ「PICU 小児集中治療室 スペシャル 2024」、「遺留捜査スペシャル」、映画「18歳、つむぎます」などがある。2024年、ドラマ「ひだまりが聴こえる」では連ドラ初主演に抜擢。
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ドラマ10「宙わたる教室」
NHK総合テレビ 毎週火曜 夜10:00~10:45/BSP4K 毎週火曜 午後6:15~7:00
https://www.nhk.jp/p/ts/11GMGMRG5V/